描かれている人物
左から:大星力弥、小浪
左から:加古川本蔵
絵の解説
「桃井館力弥使者の場」
力弥への溢れる気持ちを堪えきれず、思わず力弥を引き止める小浪。
「松切りの場」
庭の松を切る加古川本蔵。
右手には主人の桃井若狭之助がいる。
あらすじ
「仮名手本忠臣蔵」二段目
主な登場人物と簡単な説明
・桃井若狭之助(もものいわかさのすけ)
血気盛んな若い大名。師直に辱められたことを根に持っている。
・加古川本蔵(かこがわほんぞう)
桃井若狭之助の家老。
・戸無瀬(となせ)
本蔵の後妻。小浪の継母。
・小浪(こなみ)
本蔵の娘。大星力弥とは許嫁の仲。
・大星力弥(おおほしりきや)
大星由良之助の息子。小浪の許嫁。小姓として塩谷判官に仕えている。モデルは大石主税。
他、奴、侍などがいます。
あらすじ
鶴岡八幡宮での高師直と若狭之助の不穏な事件から一夜明けて、桃井若狭之助の館。
塩谷判官の口上を携えた力弥が来訪する。
小浪の母・戸無瀬は仮病を使い、代理で娘に力弥を出迎えさせる。
うっとり力弥に見惚れる小浪。
力弥は淡々と明日未明の登城命令を告げ、立ち去る。
若狭之助は本蔵に、明日登城したら高師直を討つという決意を打ち明ける。
家が断絶しようとも、師直から受けた恥辱にはかえられないと涙ながらに語る若狭之助。
本蔵は黙って庭の松の枝をスッパリ切り、「まずこの通り」と若狭之助に賛同を示す。
安心した若狭之助が寝間に下がるのを見計らい、本蔵は密かに師直の元へ馬を走らせるのだった。
私のツボ
滅多に上演されない二段目
二段目は、歌舞伎では滅多に上演されません。
2016年10月、国立劇場開場50周年記念で「仮名手本忠臣蔵」の通しが上演され、「二段目」が久々に上演されました。
2008年10月の平成中村座以来です。
「仮名手本忠臣蔵」の絵はたくさん描いていますが、「二段目」「花献上(四段目)」「十段目」の絵は描いていませんでした。
上演されない場面は商品化できないので描いていなかったのもありますが、上演回数が少ないので資料が少ないという点も大きいです。
「山科閑居」が好きなので、ぜひ観たいと思っていた矢先の通し狂言。
これで私の絵も通しになるわいと記念に描いたもの。
「梅と桜」
「二段目」の前半、通称「梅と桜」は、力弥と小浪の若い恋人が恥じらう様を愛でる場面です。
絵に描いた場面は、2016年の10月公演の際に新しく追加された演出だと思います。
文楽では力弥は終始淡々としており、小浪がうっとり見つめるだけの演出です。
とりたてて二人が絡む場面はなく、そのもどかしさが良いのですが、これはこれで珍しいの場面だったので記念に描きました。
「山科閑居」での二人の再会は痛ましいので、ウキウキした二人が描けて良かったです。
背景の家紋は桃井若狭之助のもの。舞台では銀襖に描かれています。
「松切り」
松の枝を斬ったら刀が松脂でダメになるのでは、と心配してしまう場面ですが、熱い男・若狭之助を納得させるにはこれくらいのパフォーマンスが必要かもしれません。
本蔵の、家老としての手腕が冴えわたる大好きな場面です。
単純で熱血漢な殿様と、それを陰で支える家老。
「二段目」の解説で、老獪な家老・本蔵というような説明を目にしますが、老獪というより優秀だろうよと思います。
武士道に照らせば物事を賄賂で解決すること、それ以前に嘘をつくことは恥かもしれませんが、世の中そんな単純ではないでしょうよ。
主君のため家のために、武士道にもとる、ひいては己のプライドが許さないような行為もあえてする。
桃井さんは良い御家老をお持ちですなァ、とニヤニヤする場面です。
同じ家老でも由良之助のような派手さはありませんが、渋いので好きな役どころです。
「三段目」の「足利館門前進物」も、「二段目」を観てからだと合点がいきます。
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