KNPC138 梅ごよみ

かぶきねこづくし

描かれている人物

枠左:米八 (よねはち)
枠中央:仇吉(あだきち)
枠右上:唐琴屋丹次郎(からことや たんじろう)
枠右下:お蝶(おちょう)

下:左の船には丹次郎とお蝶、右の船には政次と仇吉が乗っている

絵の解説

仲町河岸でやりあう米八、仇吉。
浴衣姿に裸足です。

米八、仇吉(原画)

仇吉からの手紙を読む丹次郎。
丹次郎との祝言が決まってはにかむお蝶。

お蝶、丹次郎(原画)

<隅田川川中の場>ですれ違う二艘の船。
丹次郎とお蝶が乗る船。
仇吉と政次が乗る屋形船。
「いい男だねぇ」と、丹次郎に一目惚れする仇吉。
屋形船から顔をのぞかせる政次。

<隅田川川中の場>(原画)

あらすじ

原作「春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)」「春色辰巳園(たつみのその)」

主な登場人物と簡単な説明

・米八 (よねはち)
深川芸者。丹次郎と深い仲。仇吉とは仕事上でもライバル関係にある。

・仇吉(あだきち)
深川芸者。丹次郎に一目惚れする。

・丹次郎(たんじろう)
吉原の遊女屋・唐琴屋の養子。
お蝶という許嫁が居ながら、芸者の米八と深い仲になっている。

・お蝶(おちょう)
唐琴屋の娘。丹次郎と許嫁の仲。

・政次(まさじ)
仇吉の朋輩。

他、千葉半次郎、古鳥左文太などがいます。

あらすじ

お蝶という許嫁がいながら、吉原芸者の米八と深い仲になった丹次郎。
それが原因で勘当を受けた丹次郎は、米八の世話で深川に侘び住まい。
米八は吉原から深川へ移って芸者をしている。

ある日、隅田川で行き交う船の中から、仇吉が丹次郎に一目惚れしてしまう。
政次にそそのかされた仇吉は丹次郎を口説く。

それを知った米八は仇吉と激しく喧嘩。
米八は仇吉が丹次郎に贈った羽織を下駄で踏みにじり、仇吉は米八を下駄で打ちすえる。

怒りが収まらない米八は、仇吉に斬りかかるが、丹次郎が仲裁に入り、二人は仲直り。
丹次郎は勘当を許され、お蝶と祝言をあげることが決まる。
寄り添う丹次郎とお蝶を見て、米八と仇吉はしらけるのだった。

*家宝の茶入れを探す話も絡みますが省略します。
丹次郎の活躍で家宝を取り戻し、盗人も成敗できたので勘当が許される次第です。

私のツボ

辰巳芸者

江戸の深川で活躍した芸者の総称で、”意地と侠気”を売り物にした芸者のことです。
深川が東南にあたるため、東南の方位である辰巳から取ったと言われています。
最近ではあまり辰巳芸者という語句は見かけませんが、深川芸者の方がイメージしやすく、吉原と差別化できるからでありましょう。
「名月八幡祭」の美代吉も同じ深川芸者。
身勝手で男を振り回す美代吉は、歌舞伎で描かれる深川芸者の代表格です。

そんな辰巳芸者の米八と仇吉が意地を張り合う演目です。
意地の張り合いというより、単なる女同士の喧嘩というか、ややドタバタ要素が強いような気もします。
それはそれで面白く、直情的なのが辰巳芸者なのかもしれませんが、あまりに伝法で鉄火すぎる二人です。
昭和二年初演ですから、すでに”幻想の中の江戸の粋”を描いたのかもしれません。

というわけで、美しい<隅田川川中の場>。
船の上に立つ仇吉の立ち姿も美しく、遠景の情景も美しい場面です。
政次が良い味を出していて、やや醒めた風情で、意地悪で、彼女が一番辰巳芸者らしいのではと思います。

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