KNPC115 身替座禅(みがわりざぜん)

かぶきねこづくし

描かれている人物

枠上:(左から)腰元千枝、太郎冠者、腰元小枝
枠右:右京
枠左上:玉の井
枠左下:右京、玉の井

絵の解説

腰元千枝、太郎冠者、腰元小枝(原画)

座禅衾(ざぜんぶすま)を被り、右京の身替をする太郎冠者。玉の井がやってきてしどろもどろ。
紫の着付けが千枝、黄緑の着付けは小枝です。

右京(原画)

二度目の出。花子と一晩過ごし、ほろ酔い気分で屋敷に戻る右京。
花道で夢心地の舞を舞います。
雪持蔦の扇。

玉の井、右京と玉の井(原画)

衾をあげ、鬼の形相の玉の井。
観念してしょんぼりする右京、表情が読めない玉の井。
怒りを超えた無の境地かもしれません。

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・山陰右京(やまかげうきょう)
洛北に住む大名。恐妻家。

・奥方玉の井(おくがたたまのい)
右京の奥方。

・太郎冠者(たろうかじゃ)
右京の家来。

・腰元千枝(ちえだ)、腰元小枝(さえだ)
玉の井に忠実に仕える侍女。

・花子(はなこ)
白拍子。右京の恋人。舞台には登場しません。

あらすじ

恐妻家の山陰右京は、持仏堂にこもって座禅をすると妻の玉の井に言い訳して、恋人の花子に会いに行きます。
家来の太郎冠者に申しつけて身代わりに座禅させますが、様子を見にきた玉の井に正体がばれてしまいます。
今度は玉の井が太郎冠者になりすまして夫の帰りを待ち受けます。
そうとは知らず、ほろ酔い機嫌で戻ってきた右京は、恋人との逢瀬を嬉しそうに語って聞かせます。
語り終えて太郎冠者の座禅衾を苦しかろうと取ってみると、そこには鬼のような形相の玉の井。
謝りながら逃げる右京を玉の井が追いかけ回し、幕。

私のツボ

欲張り構図

カードの構図を決めるとき、まず描きたい・譲れない場面を一つ決めます。
この場合は、二度目の出の艶っぽい右京。
衣装が美しく、雪持蔦の扇が描きたい。
この右京だけでも絵になりますが、玉の井あっての右京なので、鬼の形相の玉の井。
これだけでは玉の井が怪物のようで不憫なので、二人が並ぶ場面も描き加えました。
最後の玉の井の表情が絶妙で、いつも何を考えているのかなーと思います。

二人の騒動にまきこまれた太郎冠者と腰元も追加。
登場人物が少ないのと、物語が単純なので一枚に詰め込んでも絵が破綻しないですみました。
演目によっては複数枚に分けますが、できれば一枚にまとめたいと常々思っています。

髪は基本的には描かないのですが、これは描いても良かったかもしれないと今更ながら思います。
右京の乱れ髪はかなり重要なのだと再確認いたしました。

右京と玉の井

右京も玉の井も、演じる俳優さんと組み合わせによって味わいが異なります。
女性遊びに慣れた風の右京もいれば、花子に遊ばれてるのではと心配になる真面目そうな右京もいます。
強面の玉の井(心は乙女)もいれば、大名の奥方としての自負に満ちた良妻・玉の井もいます。

もちろんそれは全ての歌舞伎演目に言えることですが、「身替座禅」は特に顕著のように感じます。
物語が単純で、登場人物も少ないからこそ、俳優さんの個性がより強く全面に出るのかもしれません。
歌舞伎はその違いを楽しむのが楽しいです。
だから同じ演目でも何度見ても飽きないどころか、その都度新鮮で毎回発見があります。
大好きな演目です。

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