描かれている人物
KNPC28:鰹売り
KNPC29:新三、忠七
KNPC30:新三
絵の解説
「富吉町新三内の場」
「かっつお、かっつお!」
物語には直接絡みませんが、鰹売りはこの演目を象徴する存在です。
この鰹の小道具が本当によくできていて、本物の鰹をおろしているように見えます。
「白子屋店先の場」
お熊を連れて深川の自分の家に逃げるよう忠七をそそのかす髪結の新三。
ずるい顔の新三と、人の良さそうな忠七。
人の良い忠七は、まだ新三の正体を見抜いていません。
「永代橋川端の場」
視線の先には下駄の鼻緒を直す忠七。
この後、忠七を傘で打ち据え踏みつける新三。有名な場面です。
嵐の前の静けさです。
柳が雨に濡れる初夏の夜。
あらすじ
主な登場人物と簡単な説明
・新三(しんざ)
廻りの髪結。
お熊を自分の家に監禁して色と金の両方を手に入れようと企む。
深川富吉町の長屋暮らし。家賃を滞納している。
・忠七(ちゅうしち)
京橋新材木町の材木問屋白子屋の番頭。白子屋の娘・お熊と相愛になる。
・お熊(おくま)
白子屋の娘。忠七と結婚の約束をしているが、経営難の店を救うため政略結婚させられそうになっている。
・長兵衛(ちょうべえ)
新三が住む長屋の大家。
・弥太五郎源七(やたごろうげんしち)
神田界隈を縄張にする落ち目の親分。昔ほど顔がきかなくなっている。
他、下剃勝奴(かつやっこ)、お常(つね)、家主女房おかく、車力善八(ぜんぱち)、合長屋権兵衛などがいます。
あらすじ
「梅雨小袖昔八丈」(つゆこそでむかしはちじょう)河竹黙阿弥作
材木屋白子屋の娘・お熊は手代の忠七と恋仲ですが、持参金目当ての結婚話が進んでいます。
廻りの髪結新三は忠七に駆け落ちをそそのかし、お熊を誘拐します。
騙された忠七は川に身投げしようとしますが、土地の侠客・源七に助けられ、一旦店に帰ります。
お熊の身代金を白子屋から巻き上げるつもりの新三は朝湯帰りに初鰹を買ってご機嫌です。
源七が話をつけに新三の家へ来ますが、新三に恥をかかされ追い返されます。
老獪な家主長兵衛は、お熊を保護して帰した上に、新三から上前をはね、鰹まで持っていきます。
数ヶ月後、面目を潰された源七は新三を待ち伏せし、切り殺すのでした。
私のツボ
SWING JAZZ または盆踊り
登場人物すべてやや難ありで、全員、自分のことしか考えていません。
主人公の新三も、粋で鯔背(いなせ)な江戸っ子かというと、どうなんでしょう、平たくいえばだらしない小悪党です。
江戸に住んでいるから江戸っ子に違いありませんが、他の演目に出てくる粋な二枚目と比べるとどうしても見劣りします。
忠七も見目麗しい爽やかな好青年というわけでもなく、源七に至っては落ち目の元侠客という設定で”返り咲くチャンス到来”という意気込みが透けて見えるのが切ないです。
まともな人間は鰹売りだけかもしれません。
誰に肩入れして良いのか戸惑う物語なのですが、これが一堂に会すると、不思議なハーモニーを醸し出します。
アンサンブルの妙とでも言いましょうか、スウィング・ジャズまたは盆踊りのような熱狂をも生み出します。
その熱狂に巻き込まれ、ついつい楽しんでしまう。
ふんだんに盛り込まれた初夏の江戸情緒が、気分をさらに盛り上げ、いつしか登場人物たちに愛着が湧いてしまいます。
もぉー、みんなしょうがないなぁ、と笑ってしまう。
そんな演目です。
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