描かれている人物
中央
桜姫(さくらひめ / 中央の赤姫)
その左に局(つぼね)の長浦(ながうら)
右に桜姫弟の吉田松若(よしだまつわか)
赤枠上
(左から)白菊丸(しらぎくまる)、清玄(せいげん)
赤枠下
(左から)釣鐘権助(つりがねごんすけ)、桜姫(さくらひめ)
絵の解説
※小見出しの「」内は場名です。
中央 「新清水(しんきよみず)」
新清水寺での花見に訪れた桜姫一行。
嵐の前の静けさのような美しい情景です。
待ち受ける破滅を知る由もありません。
赤枠上 「江ノ島」
相思相愛の江ノ島の僧侶清玄と稚児白菊丸が入水するところ。
来世で会うときの目印にと、香箱の蓋と本体をそれぞれ帛紗に包んで手にしています。
白菊丸が手にしているのは香箱の蓋で清玄の名前が入っています。
赤枠下 「桜谷草庵(さくらたにそうあん)」
新清水寺の草庵での、権助と桜姫の濡れ場。
あらすじ
主な登場人物と簡単な説明
・桜姫(さくらひめ)
吉田家の息女。17歳。
生まれつき左手が開かない。
家宝が盗まれ、父と弟の梅若は殺される。
残されたもう一人の弟の松若はまだ幼く、家は取り潰しの危機にある。
その前年、盗賊に犯され子をなすが、その盗賊に恋心を抱いている。
・釣鐘権助(つりがねごんすけ)
桜姫を犯した盗賊。
桜姫の父と弟を殺し、家宝を盗んだ。
・清玄(せいげん)
白菊丸への妄執が断ち切れない。
・残月(ざんげつ)
清玄の弟子。出世欲の塊。
・長浦(ながうら)
桜姫の局。残月と男女の仲。
・入間悪五郎(いるまあくごろう)
権助の親分。桜姫の元婚約者。
「新清水」~主要人物がひととおり登場する
時系列でまとめます
・「江ノ島」から17年後
・一人だけ助かった清玄は高僧になっている
・桜姫が出家するため清玄のもとを訪れる
・清玄が念仏を唱えると桜姫の左手が開く
・桜姫の左手の手中には、白菊丸が持っていた香箱の蓋が入っている
・清玄は桜姫が白菊丸の生まれ変わりだと確信して立ち去る
・桜姫は剃髪の支度のため草庵に下がる
・悪五郎が桜姫と復縁するため恋文を権助に預ける
「桜谷草庵」〜怒涛の展開、カオスへ
・桜姫は恋焦がれた権助と再会、結ばれて出家は中止
・悪五郎の女を横取りしたと権助は急いで逃走
・事後の桜姫が清玄の名入りの香箱を持っていたため清玄が疑われる
・桜姫と清玄は不義の罪で追放される
・残月と長浦も不義密通が露見して追放される
急転直下の「稲瀬川」
鎌倉を流れる稲瀬川の土手。
追放された桜姫と清玄が途方に暮れています。
桜姫は赤子を取り上げられてしまいます。
一緒になろうと迫る清玄を桜姫は拒みます。
そこへ悪太郎があらわれ桜姫をさらおうとします。
弟の松若が悪太郎らを阻み、
桜姫は騒ぎの中ひとり逃げていくのでした。
どん底の「三囲(みめぐり)の場」
隅田川河畔の三囲神社。夜。
桜姫と清玄は物乞いになっています。
桜姫の赤子はめぐりめぐって清玄が預かっています。
我が子に会いたい桜姫、
白菊丸の生まれ変わりである桜姫に会いたい清玄。
近くにいるのに夜の闇でお互いの姿は見えません。
清玄が焚いた灯も、雨で虚しく消えるのでした。
私のツボ
「新清水」で全体の構図を把握
主要な人物がほとんど登場して全体の構図を示します。
鶴屋南北がよく採用する手法で、
『東海道四谷怪談』の「浅草観世音額堂の場」なども同様です。
ここで出てくる人物はほぼ最後まで物語に登場しますので、
なんとなく覚えておくと後々見やすくなります。
南北のスピード感
鶴屋南北の魅力の一つは怒涛のスピード展開だと思います。
あれよあれよと言う間に転げ落ちてしまう。
予習しなくても楽しめる演目もありますが、
この演目はある程度予習しておくと、
南北ワールドをより一層楽しめます。
登場人物をなんとなく把握しておくだけで大丈夫です。
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