描かれている人物
AKPC24
赤枠左上：一寸徳兵衛
同 中央：玉島磯之丞
同 右：釣船三婦
下：（左から）団七九郎兵衛、義平次
絵の解説
（左）
釣船三婦の家で団七九郎兵衛と談笑する徳兵衛。
団七と色違いの着流し。
（中央）釣船三婦の家に匿われている玉島磯之丞。
（右）耳に数珠を下げているのは喧嘩をしないという戒め
長屋裏、団七の立ち廻り
塀の向こうには神輿が行く
原画
あらすじ
あらすじ
「夏祭浪花鑑」全九段
主な登場人物と簡単な説明
・団七九郎兵衛（だんしちくろべえ）
堺の魚屋。侠客。
喧嘩で入牢していた。
・釣船の三婦（つりぶねのさぶ）
団七の世話役。今は侠客を引退したがまだまだ血気盛ん。
・一寸徳兵衛（いっすんとくべえ）
団七の義兄弟。玉島兵太夫の家来筋。
・玉島磯之丞（たましまいそのじょう）
泉州浜田藩の諸士頭玉島兵太夫の息子。遊びすぎて勘当され、道具屋の手代になる。
悪人ではないが、遊興好きで武士には向かない性格。
・三河屋義平次（みかわやぎへいじ）
団七の妻・お梶の実父。舅。金の亡者。
あらすじ
住吉鳥居前の場
堺の魚商人で侠客の団七九郎兵衛は、
大鳥佐賀右衛門の中間を傷つけて入牢していたが、
玉島兵太夫の計らいで赦免された。
住吉神社前。
団七の女房と息子、老侠客で運送商の釣船の三婦が迎えに来るが、さっそく一悶着。
三婦が団七の旧主・玉島磯之丞を救い、団七が磯之丞の恋人・琴浦を救う。
そこへやってきた大鳥方の侠客・一寸徳兵衛と喧嘩になるが、
ともに玉島家の恩をうけた身と分かり、兄弟分の誓いをする。
釣船三婦内の場
これまでの経緯
放蕩息子の磯之丞は勘当され、清七と改名して道具屋の手代となる。
その道具屋の娘と恋仲になり、先輩の手代と団七の舅・義平次らの奸計によって
五十両を騙し取られた挙句、殺人まで犯してしまう。
という経緯があり、磯之丞と琴浦は三婦の家に匿われている。
大坂では詮議が厳しいので二人を旅に出すことにする。
そこへ、徳兵衛の女房・お辰が訪ねてくる。
三婦はお辰の侠気に感服して、清七を預けて備中へ逃す。
その直後、義平次がやってきて、
団七に頼まれたと偽って琴浦を駕籠で連れ去る。
長町裏の場
団七は後を追い、長町裏で琴浦を奪い返す。
しきりに金を無心し、悪態をつく義平次と争ううち、殺してしまう。
団七は祭りの神輿を担ぐ人々に紛れて逃げる。
私のツボ
上方の男たち
「夏祭浪花鑑」の女たちと男たち、という構図でまとめました。
まずは男たち。
釣船の三婦は、耳に数珠をかけている姿を描きたかったので、
徳兵衛の女房・お辰を見定めている場面。
ド派手な着流しに着替える前です。
徳兵衛と磯之丞も「三婦内」での衣装。
下は「夏祭浪花鑑」といえば、の殺しの場面。
磯之丞はイマイチ存在感が薄いのですが、
わりと丸本歌舞伎によく出てくる定番の役柄です。
立派な家柄なのに遊び人、いわば”ぼんち”ポジション。
根っからの悪人ではなく、
育ちの良さゆえの鷹揚さ・甘さがあって憎めないという役柄です。
往々にして、主人公が彼に振り回されるという展開です。
「伊勢音頭恋寝刃」「双蝶々曲輪日記」などなど。
異色なのは義平次で、シワシワの守銭奴なのですが、
なんでしょう、
商人の町・大坂ならではの皮肉かなと深読みしてしまいます。
金の亡者になるなかれ。
意地悪婆さんの役柄は丸本物に限らずちょくちょくいますが、
義平次のような妖怪味溢れる”因業ジジイ”の役柄は見たことがありません。
敵役としては異色かなと思います。
泥まみれ
「夏祭浪花鑑」といえば、長町裏の殺しの場面。
祭囃子にのっての立ち廻りは13の見得が盛り込まれています。
殺しの場面ですが、様式化されていて残忍さよりも演舞のように見えます。
13の見得のうち、一番好きな見得。
背筋を伸ばしてぐぐっと反り身になり、腕を伸ばして刀を下向きに持つ。
身体と刀が二本の直線を構成して造形的に美しい。
足元にモタモタと絡まる義平次が程よいアクセントになります。
団七は文句なしでたっぷり素敵なのですが、
義平次は水木しげるの漫画に出てくる妖怪のようで
動いている舞台だと団七に目が行くのでさほど気にならないのですが、
ブロマイドだとその強烈さが際立っています。
煮しめた佃煮のような色合いで、
これは上方ならではのお笑いポイントなのかな、と思ってしまうほど。
本来は団七も義平次も髷を切ったザンバラ頭になりますが省略。
団七の刺青は、波に牡丹。
弁天小僧菊之助は波に桜です。
猫なので刺青というより染毛、ステンシルです。
毛は抜けるので定期的に染め直さねばならず、
手間も金もかかる酔狂な道楽です。
「夏祭浪花鑑」の女たちはこちらをどうぞ
AKPC26 夏祭浪花鑑（なつまつりなにわのかがみ）の女たち
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