KNPC62、206 勢獅子(きおいじし)

かぶきねこづくし

描かれている人物

KNPC62:
(左から)手古舞、獅子舞、手古舞
※手古舞は手古舞姿の芸者のことで役名ではありません
※獅子舞は正確には鳶頭ですが公演によって名前が異なるので獅子舞としました

KNPC206:
左上から時計回りに、
ぼうふら踊り
手古舞(紅)
鳶頭鶴吉
芸者
芸者
獅子舞
鳶頭亀吉
背景

絵の解説

KNPC62

KNPC62(スキャンデータ)

KNPC206

ぼうふら踊り(原画)

手古舞(原画)

今回は手古舞は一人のみということで白は不採用。

鳶頭亀吉、鳶頭鶴吉、芸者二人(原画)

獅子舞(原画)

背景(原画)

背景

手古舞が二人だった没バージョン

手古舞二人バージョン

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・鳶頭鶴吉(とびがしら つるきち)
座頭が務める。鳶たちの親分。

・鳶頭亀吉(とびがしら かめきち)
鶴吉の次、準主役。

・芸者
通常は二人出るが一人の場合もある。
家にちなんだ名前がつくので出演者によって異なる。
お京、お駒、お松等。

・手古舞(てこまい)
祭用の衣装を着た芸者たち。
家や名前にちなんだ名前がつく場合もある。
おくら、おしん、おきよ等

・鳶の者(とびのもの)
梅吉、染吉、松吉など公演によって異なり、鳶頭となる場合もある。
その時々で異なります。

他、若い者などがいます。

あらすじ

江戸の三大祭のうちの一つ、赤坂日枝神社の山王祭。
鳶頭はじめ芸者や鳶の者、手古舞姿の芸者たちが勢ぞろいします。
鳶頭たちは曽我兄弟の仇討ちの物語、獅子舞、ぼうふら踊りなどを披露し、祭り気分を盛り上げるのでした。

私のツボ

やらかした一枚

「勢獅子」は華やかで賑やかな演目で大好きなのですが、その賑やかさをどう描いて良いのか迷ってしまい、シンプルにまとめたのがKNPC62。
2014年に描いたもの。
「お祭り」と区別するために獅子舞と手古舞姿の芸者二人を描きました。
主役の鳶頭と芸者を描かないとは随分大胆な選択だと我ながら思いますが、また機会があれば描こうと迷った挙句の取捨選択だったと記憶しています。
なお、上部の水色の雲模様は舞台に描かれているもの。

他の演目との兼ね合いもあり、なかなか描く機会がなく、月日はめぐり2022年。
ようやく「勢獅子」を描くことになり、2014年の反動でほぼ全員登場させるという暴挙に出ました。

やらかしたかもしれない、と賑やかな絵面を見つつ監修に提出。
案の定、かなりお手を煩わせてしまったようで、これ以降、人数制限が設けられました。
一演目につき5名まで、コマ割は3つまで。
むべなるかな。

いやーお手間かけて申し訳ないことしたなぁやらかしたなぁと反省しつつ、描きたかったものが描けたので満足しています。
制約があるのは仕方ないとして、制約があったらあったでこれまた楽しいというものです。
ともあれ色々な意味で記念すべき一枚となりました。

清元と常磐津

江戸の祭りの舞踊といえば「お祭り」「神田祭」「三社祭」。
「お祭り」と「勢獅子」は同じ山王祭が舞台で、鳶と芸者が絡みます。
前者は清元、後者は常磐津と音楽が違います。
その違いについては専門家に譲るとして、常磐津は見台(けんだい:本を置く台)が朱塗りで蛸足が三本付いている特徴があります。
ピアノの椅子のような猫脚で、これが複数並ぶ様は楽しくなります。
尚、清元タイプの見台もあるようです。
それから常磐津の肩衣は柿色の決まっています。
当然ながら市川家に由来するそうです。
一方、清元は黒塗りの一本足のすっきりした見台です。

ちなみに義太夫は太い房を垂らし蒔絵を施した豪華な見台で、長唄は脚が交差した白木の見台です。

手古舞

衣装の名称で、派手な着付けに裁付袴(たっつけばかま)に花笠を背中に背負い、錫杖を手にしたスタイル。
たっつけ袴は踏込袴、軽衫(かるさん)とも言われ、ポルトガル語でズボンを意味するcalçaに名前も形状も由来します。

たっつけ袴はその足捌きの良さから武士が着用し、やがて民間にも広く普及しました。
手古舞の由来は、江戸の祭礼の警護にあたった鳶衆が、梃子(てこ)を使って作業をすることから”てこの者”からきていると言われています。

芸者の手古舞といえば「名月八幡祭」。
祭りのために新調した衣装代に窮する美代吉。
祭りの衣装ならば正絹ではないだろうし大した金額でもないのでは、と素人丸出しの感想を持っていた私ですが、「勢獅子」の手古舞の衣装を観て、これはお金がかかるわいと思い直しました。
「名月八幡祭」では不穏な空気が漂いすぎて手古舞の衣装をじっくり愛でる余裕がありませんでした。
なので、「勢獅子」を見ると「名月八幡祭」も併せて思い出されるのでした。

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