KNPC198 河内山(こうちやま)

かぶきねこづくし

描かれている人物

左上赤丸
(上から)松江出雲守、北村大膳

赤枠三点
河内山宗俊

絵の解説

松江出雲守(原画)

松江出雲守。他の絵の下絵の線が見えています。描き損じか何かですが、紙が勿体無くて描いたんだろうと思います。

北村大膳(原画)

北村大膳。こちらも下絵の線が見えております。

河内山(原画)

談判の後次々と出されるご馳走を前にして嬉しそうな河内山。やはり下絵の線が見えております。
「相なるべくは山吹色の茶を一服所望」

袈裟が天台宗、衣は浄土宗、手にしている数珠は日蓮宗と、ちぐはぐな扮装で、専門家が見れば一発で正体が分かってしまう仕掛けです。
仮にバレたとして、河内山なら新興宗教のあつらえとかナントカで押し通してしまいそうです。

河内山(原画)

松江家の玄関先で正体がばれるが開き直り啖呵をきる河内山。正体表す。

河内山(原画)

悠々と引き上げる河内山。作戦がうまくいってご機嫌です。
片方の髭を描き忘れています。通称、ヒゲ漏れ。髭はまとめて一番最後に描くのと、左から右へ筆を払うので、片方を描き忘れることがよくあります。

あらすじ

本外題 「天花粉上野初花」(くもにまごう うえののはつはな)
河竹黙阿弥 作

主な登場人物と簡単な説明

・河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)
御数寄屋坊主(おすきやぼうず)。

御数寄屋坊主について
将軍や大名に仕え、
登城者に茶を提供したり、
茶にまつわる道具や行事などを取り仕切る役人。
身分は御家人で武士階級に属します。
史実の御数寄屋坊主は専門知識を要するため茶の家筋の世襲制でした。

・松江出雲守(まつえいずものかみ)
松江藩の当主。短気で身勝手。
意に従わない浪路を手打ちにしようとしている。

・浪路(なみじ)
上州屋の娘で松江家に腰元奉公している。本名はお藤。

・北村大膳(きたむらだいぜん)
松江家の重役。自分の保身と出世しか頭にない。

他に浪路の母親や親戚の和泉屋清兵衛、
高木小左衛門といった松江家家老なども出てきますが省略します。

あらすじ

河内山が質屋の上州屋へ行くとなにやら取り込み中の様子。
聞けば松江候に奉公中の店の娘お藤が、殿の側室になれと言われて困っているとのこと。
河内山はお藤を救い出すことを約束し、手付け金百両を受け取ります。
—ここまで<上州屋質見世の場>上演されない場合もあります—

上野寛永寺の使者になりすまして松江家に乗り込んだ河内山は
寛永寺の威光を笠に松江守を脅して浪路を救出します。
あまつさえ「山吹色の茶をくれ」と袖の下まで要求します。

その帰りの玄関先で北村大膳に正体を見破られます。
河内山の顔に大きなホクロがあるのを覚えていたのでした。
開き直った河内山は、
直参である自分を突き出せば全て将軍様の耳に入るぞと脅し、
悠々と松江家を後にするのでした。

私のツボ

河内山〜愛嬌があって憎めない男ver.

KNPC102は”河内山〜悪の華ver.”でしたが、こちらは悪いヤツだけど憎めない河内山バージョンです。

山吹茶を所望するときのヤニっこい笑顔、
「江戸っ子は気が短けえんだ、早くしねえな」と凄むところ、
「ばーかーめ」の高笑い、
どこまでが演技で、どこまでが本性なのかわかりませんが、多分、どれも本性なのでしょう。
くるくる百面相のようで、食えないヤツです。

悪党然としたところはあまり無く、でも押し出しが良く、堂々とした河内山。
私は愛嬌があって憎めない河内山が好きです。

北村大膳はKNPC102とあまり変化はありません。
松江邸玄関先で、河内山にやり込められて怒り心頭に発するの図。
松江出雲守は松江邸広間にて、河内山に浪路を返す事を承知させられるの図。

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