描かれている人物
左上:六郎兵衛
右上:おかん、権三
中央:井戸替をする長屋の住人と、それを眺める権三夫妻。
左下:助十、助八
右下:彦三郎
絵の解説
六郎兵衛、おかん、権三
喧嘩をする助十(桜の刺青)、助八(牡丹の刺青)兄弟。
長屋の住人たち。
皆で縄を引っ張って、井戸の水をさらい、井戸の内側を掃除します。
井戸は舞台にはなく、上手の幕の後ろあたりにあるのでしょうか。
これは縄の最後尾、大家が音頭をとっています。
あらすじ
岡本綺堂 作
主な登場人物と簡単な説明
・権三(ごんざ)
籠かき
善良で喧嘩っぱやい江戸っ子気質
・助十(すけじゅう)
権三の相棒
権三の隣に弟と住んでいる
・おかん
権三の女房
・六郎兵衛(ろくろべえ)
長屋の大家。善人で、長屋の住人たちから慕われている
・彦三郎(ひこさぶろう)
小間物屋彦兵衛のせがれ
父は強盗殺人の罪で入牢中に病死したが、無実を証明して父の汚名を晴らしたいと思っている
他、助八、小間物屋彦兵衛、猿廻し与助、左官屋の勘太郎、役人・石子伴作などがいます。
あらすじ
七月、神田の裏長屋。
長屋中が総出で井戸替え作業中、この長屋に住んでいた小間物屋彦兵衛のせがれの彦三郎が、家主の六郎兵衛を訪ねて来る。
彦兵衛は強盗殺人の罪で収監中、この春に死んだのである。
実直な父に限ってそんなことをするわけがない、と話す彦三郎の言葉に、権三と助十は実は真犯人を目撃していたことを告白する。
関わり合いになりたくないから、黙っていたのだった。
大家は再審議をしてもらうため、権三、助十、そして真犯人の勘太郎の三人を偽りの罪状で奉行所へ訴え出る。
勘太郎は逮捕され、彦兵衛が生きていたこともわかる。
彦兵衛は冤罪だと睨んだ大岡越前守が、わざと獄死の発表をし、真犯人を泳がせていたのだった。
一件落着、めでたし、めでたし。
私のツボ
賑やか
年に一度のイベント・井戸替で賑わう長屋裏。
次から次へと住民が出てきて、老若男女が総勢45名。
願人坊主や猿廻しもいます。
井戸替で賑やかな様子に加えて、夫婦喧嘩に兄弟喧嘩に隣人同士の喧嘩(権三と助十)とすぐ喧嘩が勃発します。
鉄火肌の江戸っ子は喧嘩スタイルの会話なのかもしれません。
すぐカッとなって、すぐ鎮火して、また火がついて、と、とにかく賑やかです。
歌舞伎にお決まりの「〜と見せかけて実は」はなく、全員見たままの人物設定です。
大家といえば「髪結新三」はじめ、食えない大家が多いのですが、六兵衛は珍しく善人です。
どんでん返しもなく、混乱することなく物語を追うことができます。
喧嘩っ早く、単純ですが裏表がなく、人情に厚い長屋の住人たち。
やや騒々しいですが、暑苦しくならないのは、夏芝居なので衣装が涼しげな浴衣だからでしょうか。
着方も緩く、襟元も大胆にはだけていますが、だらしなく着崩れないのはさすがです。
着崩れているように見せる着方なのでしょう。
井戸替という、現代では珍しい夏の風物詩を中心に、主要な登場人物を配置しました。
大人数が舞台に上がる演目は賑やかで楽しいです。
その賑やかな雰囲気をまとめました。
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