描かれている人物
左:小林舞鶴
右:曽我五郎
絵の解説
父の敵工藤祐経に対面しようと、血気にはやる曽我五郎時致が鎧を小脇にかかえて駆け出すのを、小林朝比奈の妹、舞鶴がとどめて鎧の草摺りを引き合うところ。
あらすじ
通称「草摺引(くさずりびき)」
重鎧を引っさげて 父の仇工藤祐経に会いに行こうという五郎を、小林舞鶴が「まだ時期が早い」と引きとめようと草摺を引き合う。
兄の小林朝比奈の場合もある。
私のツボ
五郎の蝶
舞台いっぱいの富士山と紅白の梅と五郎と舞鶴の派手な衣装。
正月の縁起物の舞踊だけあって、華やかな舞台です。
五郎の衣装は、黒繻子綿入れに、蝶が刺繍されています。
弟・五郎は蝶、兄・十郎は千鳥の衣装を着ます。
「寿曽我対面」でも、それぞれ蝶と千鳥の長裃を着用しています。
これは原作である「曾我物語」巻八に「十郎がその日の装束には、(中略)村千鳥の直垂(ひたたれ)に、(中略)五郎がその日の装束には、(中略)蝶を三つ二つ所々につけたる直垂に(後略)」との記載があることに由来しています。
蝶が美しく飛ぶ様子から吉祥文様として、古くから用いられていました。
バリエーションも豊富で、家紋にも使われています。
曽我五郎の衣装に使われる蝶は、羽を左右対称に開いた形ですが、蝶の繊細さよりも華やかさが強調されています。
どっしりした佇まいで、羽の軽さがあまり感じられません。
そこは武士だからなのか、はたまた荒事の曽我五郎だからでしょうか。
一方、千鳥は柔らかな和事の味わいの兄・十郎にはよく似合う文様です。
もっと雄々しい文様にすることもできたでしょうが、蝶と千鳥という可愛らしい文様にしたのは、曽我兄弟に対する人々の愛着の表れのようにも思えます。
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