KNPC60 夏祭浪花鑑(なつまつりなにわのかがみ)

かぶきねこづくし

描かれている人物

団七九郎兵衛、一寸徳兵衛

絵の解説

「住吉鳥居前」
団七と徳兵衛の立ち回り。
後ろのオレンジ色の熨斗(のし)は、髪結床「碇床」の暖簾。
水引の横に団七を務める俳優さんの家紋が入りますが省略しました。

原画

あらすじ

「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわのかがみ)」全九段

主な登場人物と簡単な説明

・団七九郎兵衛(だんしちくろべえ)
元堺の魚売り。
元は孤児で、三河屋義平次に拾われて魚屋となり、義平次の娘お梶と結婚した。

・一寸徳兵衛(いっすんとくべえ)
侠客。備中(現在の岡山県)玉島の出身。

・お梶(おかじ)
団七の女房で、三河屋義平次の娘。

・お辰(おたつ)
徳兵衛の女房。

・釣船三婦(つりぶねのさぶ)
団七が普段から世話になっている老俠客

・三河屋義平次(みかわやぎへいじ)
お梶の父。金に目がない強欲な悪党で、清七と名前を変えて手代奉公する磯之丞を騙して五十両を搾取。

あらすじ

三段目「住吉鳥居前」
大阪・住吉神社の鳥居前。
喧嘩で入牢していた魚売り団七が出牢する日。
女房・お梶、息子の市松、釣船三婦が団七を迎えに来る。
三婦が団七の旧主・玉島磯之丞を救い、団七は磯之丞の恋人傾城琴浦を佐賀右衛門から救う。

佐賀右衛門は意趣返しに、手下の一寸徳兵衛を差し向ける。
団七と徳兵衛が争うところにお梶が仲裁に入り、二人は義兄弟の契りを交わす。

六段目「釣船三婦内」
三婦は、団七の舅・義平次の奸計に巻き込まれ殺人を犯した清七(磯之丞)と琴浦を匿っている。
高津の宮の宵宮の日、三婦の家に徳兵衛の女房のお辰が訪ねてくる。
お辰の侠気に感服した三婦は、清七を預けて備中へ逃す決心をする。
三婦が出かけた隙に義平次がやって来て琴浦を誘拐。
団七は大急ぎで義平次の後を追う。

七段目「長町裏」
長町裏で義平次に追いついた団七は、義平次を説得するが、金に目がくらんだ義平次は耳を貸さないどころか悪態をつく。
じっと耐える団七だったが、ふとしたはずみで義平次を殺してしまう。
そして通りかかった宵宮の御輿の人混みに紛れて逃げてゆく。

私のツボ

男伊達

大阪の蒸し暑い夏の匂いがたっぷり詰まった、大好きな演目です。
夏の暑い午後、扇風機だけ、下手したら団扇だけで熱々のたこ焼きを食べるような感覚の演目です。

物語が進むにつれ、温度が上昇、湿度もじわじわと上がり、「長屋裏」でピークに達します。
そんな暑苦しい演目の、涼しげな場面を描きました。
爽やかな朝、でも今宵は熱帯夜、といった具合です。
牢屋を出たばかりでむさ苦しい姿の団七が、髪結床に入ってスッキリ男前になる演出はいつ見ても楽しいです。

その後の徳兵衛との立ち廻り。
お梶が仲裁に入り、三者で三角形を形成する見得がよく知られていますが、絵にすると小さくなってしまいます。
そこは舞台で堪能していただくとして、やはり団七と徳兵衛の男伊達を描きたかったので、二人の立ち廻りとしました。

夏狂言なので、衣装はさっぱりとした浴衣です。
アクセントとして碇床の暖簾のオレンジ色の熨斗模様を配置しました。

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