描かれている人物
KNPC08:雪姫
KNPC113:
上段左:(上)松永鬼藤太、(下)十河軍平実は佐藤正清
上段中央:松永大膳
上段右:(上)慶寿院、(下)狩野之助直信
下段左:雪姫
下段右:此下東吉
絵の解説
縄が解けた雪姫と桜吹雪。
それぞれ何をしているところか?
松永鬼藤太:縄を解いた雪姫を捕まえようとするところ
十河軍平:大膳と東吉の碁の対戦を見物中
松永大膳:大詰の見得
慶寿院:幽閉されていた慶寿院が姿を見せ合掌
狩野之助直信:縛られて引っ立てられて行くところ
雪姫:つま先でネズミの絵を描いている
此下東吉:井戸から碁笥(ごけ)を取り出した後の見得
あらすじ
祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)」四段目
主な登場人物と簡単な説明
・雪姫(ゆきひめ)
絵師・雪舟の孫で、自身も絵師。
・松永大膳(まつながだいぜん)
天下を狙う大悪人。
夫ある身の雪姫に横恋慕している。
反逆を起こして金閣寺に立て籠もっている。
・此下東吉(このしたとうきち)
小田春永の家臣。
慶寿院を救うため、寝返ったふりをして大膳のところへ潜入した。
・狩野之介直信(かのうのすけなおのぶ)
雪姫の夫で、足利家お抱えの絵師。
・慶寿院(けいじゅいん)
将軍・足利義輝の母。
大膳に捕らえられ、金閣寺に幽閉されている。
・松永鬼藤太(まつながきとうだ)
大膳の弟。
・十河軍平(そごうぐんぺい)
松永大膳の家来だが、実際は東吉の家来・佐藤正清である。
あらすじ
足利将軍に謀反を企む松永大膳は、将軍の母・慶寿院を金閣寺の二階に幽閉している。
そこへ此下東吉が来て、松永の前で機知をあらわし召し抱えられる。
一方、天井に竜の絵を描かせるという口実で、狩野之助直信の妻・雪姫を口説いていた。
絵を描くか、言いなりになるか迫る大膳。
手本が無いと絵は描けぬと言う雪姫に、大膳が手本にと刀を抜く。
その刀こそ、雪姫の父・雪村が何者かに殺され奪われた家宝の刀であった。
父の敵と雪姫は斬りかかるが、桜の木に縛り付けられてしまう。
絶体絶命の雪姫は、祖父・雪舟の故事に倣って桜の上に鼠の絵を描く。
たちまち白鼠が現れ、縄を食いちぎる。
そこへ東吉があらわれ、雪姫と慶寿院を助け、実は真柴久吉と名乗る。
久吉は、怒り狂う大膳に戦場での再会を約して別れる。
私のツボ
欲張りフルコース構図
KNPC08は、三姫というテーマで描いたもののうちの一枚。
他の八重垣姫、時姫も背景なしのカットなので、それに合わせて背景は描き込んでいません。
それだけでは寂しいので、桜の花を散らしました。
うってかわってKNPC113は、ほぼ総出演の欲張り構図になりました。
「金閣寺」といえば、縄に縛られた雪姫と降りしきる桜の花びら。
大膳の実悪っぷりも相まって、やや嗜虐的な美が目立つ演目です。
その魅力も踏まえた上で、
他にも見どころがたくさんあるとばかりに勇んで描いたので、このような欲張り構図になりました。
国崩しの大膳、爽やかな東吉、和事の直信、赤っつらの鬼藤太と軍平。
歌舞伎の典型的な役柄が勢揃いしています。
「実は〜」のどんでん返しもあります。
舞台も豪華で、金閣寺のセリはもちろん、下手には滝壺、上手には遠景で満開の桜と五重塔。
金閣寺内部の装飾も豪華、桜の花びらの量も豪勢です。
おりしも、五代目雀右衛門さんの襲名披露公演のタイミングだったのもあり、ほぼ全部詰め込みました。
植物いろいろ
「金閣寺」にはたくさんの植物が描かれています。
何と言っても、東吉の衣装の瓢箪模様。
これはモデルとなった羽柴秀吉の千成瓢箪に由来します。
瓢箪を題材にして、ここまで美しく優雅なデザインにできるのだなと感心します。
ユーモラスな瓢箪の形状と、蔦のバランスが絶妙なのでしょうか。
次に、大膳が碁を打つ部屋の竹と虎。
側面は色とりどりの牡丹です。
そして慶寿院が幽閉されている部屋は、紫色の花が描かれています。
昇藤(ルピナス)か葛の花か、どちらも葉の形状が異なり、花の形もやや異なるような気もします。
何の植物が描かれているのか明記された資料にたどり着けていないのですが、楓の樹に葛の花が絡まっている、ということでとりあえず収めています。
まさに百花繚乱、桜花爛満の歌舞伎絵巻です。
コメント