描かれている人物
左端が辰五郎、梯子の上は焚出し喜三郎
絵の解説
左端で左腕を伸ばしているのが辰五郎。
梯子にぶら下がっているのは焚出し喜三郎。
あらすじ
「神明恵和合取組~め組の喧嘩(かみのめぐみわごうのとりくみ~めぐみのけんか)」四幕八場
主な登場人物と簡単な説明
・辰五郎(たつごろう)
町火消「め組」の頭(かしら)。持ち場は浜松町。
・焚出し喜三郎(たきだし きさぶろう)
土地の顔役として信頼が厚く、辰五郎も兄貴分のように慕っている。
町奉行と寺社奉行の両方に顔がきく。
他、鳶の仲間、力士たちがいます。
あらすじ
大詰
既に空き地に勢揃いしていため組の鳶のものは辰五郎が駆けつけ皆で水盃をかわすと、威勢の良い木遣りの掛け声とともに相撲場へと出発する。
相撲小屋の前で、め組の鳶と力士の大喧嘩が始まる。
そこへ町奉行(鳶の管轄)と寺奉行(力士の管轄)の二つの法被を着た焚出しの喜三郎が梯子を使って喧嘩の真ん中に分け入る。
これを見た双方は、喜三郎の仲裁で喧嘩を終えるのだった。
これまでの経緯はKNPC87,88をご覧ください。
私のツボ
鳶と力士の群舞
大人数での大乱闘というだけでも楽しいのですが、さらに鳶と力士とあって、楽しさ倍増です。
もはや群舞と言ってさしつかえありません。
力士を演じる俳優さんは肉襦袢を来ており、そのせいで動きづらいのか、演技なのか、動きがユーモラスで可愛いです。
動きの速い鳶たちが屋根に登って瓦を投げる場面も楽しいのですが、ここはやはり梯子を使っての喜三郎の登場の場面を描きました。
私の大好きな三角形の構図です。
双方、さっと引いて喧嘩は収まりますが、この引き際の潔さも江戸っ子の重要な気質でありましょう。
しっぽとまわし
かぶきねこづくし(R)は猫なので、しっぽがついています。
着物も袴も打掛も、しっぽの部分にスリットが入っている仕立てになっています。
ちょうど背中の中心は縦に切替線が入るので、その縫い目を利用し、くけ縫いでしっぽ穴があることにしています。
特に聞かれることもありませんが、自分の中で辻褄を合わせておきたいのです。
絵の仕事に携わる前、数年間、婦人服の仕立ての修行をしていました。
ちなみに師匠はフランスでクチュリエをされていた大マダムで、六代目歌右衛門さんの大ファン。
フランスのサロンがパリ五月革命で閉鎖になったので日本に戻ったという、歴史の生き字引のような方でした。
色々あって今に至るのですが、今でも趣味で服を作ります。
服作りで面白いのは、平面を立体にするところ。
立体にしたら終わりではなく、そこに時間(着用する時間)と動きも加わるので、実用も意識しなくてはなりません。
その匙加減が難しく、また面白いところです。
それもあって、衣装を見るのは大好きです。
その衣装の構造、素材、材質、縫製などを推測するのがとても楽しいのです。
話を戻します。
それゆえ衣装に対しては思い入れがありますので、自ずと”しっぽ穴”という設定が生まれました。
さて、まわしにおけるしっぽですが、まわしに”しっぽ穴”を開けることは現実的ではありません。
スリットがあると、まわしの強度が保てなくなり、激しい取り組みでちぎれかねません。
と言って脇からしっぽをはみ出させるの見目麗しくない上に、まわしの安定感が悪くなります。
試行錯誤の結果、結び目の上から出すということにしました。
これなら取り組みの際に邪魔になりませんし、猫としてもそこまで痛くはないだろうと思います。
とはいえまだ”まわしにおける尻尾のありよう”は検討中ですので、更なる研究が待たれます。
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