お蔵入り 京鹿子娘道成寺その4

お蔵入り

絵の解説

振り鼓(ふりつづみ)
銀箔の鈴太鼓(すずたいこ)を二つ手に持っての踊り。
白地に薄墨桜。
徐々に本性を表していきます。

原画

鐘入り
この後、引き抜きで鱗模様の衣裳になる。

スキャンデータ

おまけ:紅白の縄

原画

諸行無常、寂滅為楽

道成寺〜お蔵入り編全4回にお付き合い頂きありがとうございました。
どさくさに紛れて、かなり古い絵も載せられ、良い供養となりました。
この道成寺を描いていた頃は、道具も模索中でいろいろ試していました。

やがて絵の具も紙も筆も”これ”というのが見つかりました。

輪郭線は仮名用の柔らかい筆を使って描いており、長らく愛用している筆がありました。
いつも何本かまとめて買うのですが、たまたま備蓄をサボっていたら最後の一本になってしまい筆屋に求めに行くとメーカー欠品とのこと。
何軒か筆屋をあたるも、どこも在庫がないのでメーカーというか製作所を調べると、奇しくも実家の近くでした。
これも何かのご縁と、筆を持ってその住所を尋ねてみると住宅街の中に小さな筆屋さんがありました。
聞けば、その筆を作っていた職人さんが一昨年亡くなられて、もう作っていないとのこと。
あまりのショックで言葉を失っていたら、製作所に一本だけあったその筆を記念にとくださいました。
それから随分経ちますが、いただいたその筆はまだ使えずにいます。

ちょうど一冊目の絵本を描いていた頃の話。
当たり前のことですが、いつまでも変わらずにあるというものは無いのだなと思い知りました。
とはいえ使う側も変わります。
細い軸が良い時もあれば、太めの軸が良い時もあり、あまり使わない筆をふと使ってみたら良かったり。
その後、筆はレギュラーと補欠の入れ替わりが激しくなり、”この一本”から”筆チーム”になりました。
道具をめぐる諸々の変化の中に、それを使う自分自身も入っているのだとたまに気がつくことがあります。
たんまり備蓄したのに今はさほど使わなくなった道具もあれば、製造中止になった紙や絵具もあります。

諸行無常、寂滅為楽

白拍子の舞の一節で締めたいと思います。

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