KNPC175「助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)」その5白玉

かぶきねこづくし

描かれている人物

*描いている人物が多く、説明も長くなるので分割します。
三浦屋白玉(みうらやしらたま)

絵の解説

妓夫(ぎう)の肩に手を乗せて花魁道中の白玉。

白玉(原画)

紫地に桜のくす玉の打掛、蝶があしらわれた俎板帯。

あらすじ

役の説明

・三浦屋白玉(みうらやしらたま)
揚巻の妹分。揚巻と人気を二分する売れっ子花魁。

あらすじ

吉原仲之町、三浦屋の格子先。
吉原一の人気花魁揚巻(あげまき)の元へは髭の意休が子分をつれて通ってきます。
助六の喧嘩沙汰を心配した母満江と白酒売りになった兄の十郎は、揚巻のところへ意見を頼みに来て、その真意を知ります。
助六があちこちで喧嘩を起こすのは、刀を詮議するためなのでした。
意休は助六の本心を見透かし、兄弟団結して親の敵を討てと意見をし、香炉台を切って見せます。
その刀こそ友切丸で、意休こそ伊賀の平内左衛門という盗賊だったのです。

はやる助六を、揚巻は意休の帰り際を待つようなだめるのでした。
ーー幕ーー
この後、水入りの場がつく場合があります。
意休を討った助六は、揚巻の気転で、刀を持って吉原を抜け出します。

私のツボ

名前の由来

助六、揚巻、白玉と、食べ物由来の名前かと思っていました。
寿司の助六とあげ巻は、人気歌舞伎にあやかって名前がつけられたもので、舞台が先です。

助六の由来は諸説ありますが、助六という男が島原の傾城総角(あげまき)と心中した事件が題材となっていると言われています。
その事件を題材にとった浄瑠璃「萬屋助六心中(よろずやすけろくしんじゅう)」のスピンオフ作品「紙子仕立両面鏡(かみこじたてりょうめんかがみ)」の主人公の名前です。
父の助右衛門からとって助六となったという、とてもわかりやすい由来です。
揚巻は、総角(あげまき)結びから取られているのでしょうか。
揚巻の鬘、立兵庫(たてひょうご)の背面に大きな総角結びの房が下がっています。
総角結びは歴史が古く、源氏物語の「総角の巻」で和歌に詠まれています。

さて、白玉はと言いますと、元々は喜瀬川(きせがわ)という名前でした。
喜瀬川は「寿曽我対面」や「外郎売」に出てくる傾城で、助六が”実は曽我五郎”という設定なので、「曽我狂言」繋がりの名前です。

安永の頃、吉原の火焔玉屋で大人気の白玉という遊女がいたので、それにあやかって白玉という役名にしたと言われています。
朝顔仙平といい、福山のかつぎといい、売り出し中のものを差し込んだり売れているものにあやかることは歌舞伎の伝統であり真髄の一つなんだろうと思います。
面白そうなものは何でも取り込む貪欲さと下心があればこそ、今も新鮮味を欠かさず、生きながらえているのでしょう。

参考:戸板康二著「歌舞伎役名由来」(駸々堂)

No.2の余裕

白玉は揚巻の妹分とされていますが、白玉も売れっ子花魁です。
ですが、揚巻ほどのプレッシャーがないせいか、肩の力が抜けた砕けた軽さがあります。

「もうし、意休さん。お前がそのように心がおおいゆえ、揚巻さんが嫌がらしゃんすわいなぁ。ちとお嗜みなさんせいなァ」
と下世話な発言をする意休に意見したり、
「揚巻さん、待たしゃんせ」と揚巻を呼び止めて意休と仲直りさせようとしたり、
白玉でなければできない立ち回りでしょう。

 

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