描かれている人物
KNPC47:(左から)お祭り佐七、小糸
KNPC48:(左から)小糸、お祭り佐七
絵の解説
二軒茶屋『松本』座敷の場
同じ夜着に入る小糸と左七
借金の型で身ぐるみはがれた芸者の小糸を見かねて、お祭り左七はひとつ夜着(よぎ)に入ります。
濡れ場です。
下着姿で途方に暮れる女を抱き寄せ、肌を暖め合う二人。
夜着はドテラというより布団に近く、袖付きの布団のようなものです。
この二人(二匹)の表情はとても気に入っています。
下心と江戸っ子の人情がせめぎ合う佐七と、夜着と佐七の温もりに身を委ねる小糸、佐七の優しさが心を溶かします。
原画の上に桜の花が描いてありますが、他のカード用のものです。
「橋袂殺しの場」
橋のたもとで小糸を殺す左七
とどめを刺すところは、小糸が海老反りになります。「女殺油地獄」の殺しの場面と同じスタイル。
そのクライマックスの手前、怯える小糸と怒り狂う佐七。
揺れる柳がポイントです。柳大好き。
あらすじ
主な登場人物と簡単な説明
・小糸(こいと)
深川仲町の売れっ子芸者。
お人好しで酒を飲んでは人に気前よく物や祝儀をあげてしまう。
・お祭り左七(おまつりさしち)
江戸っ子の鳶(とび)
他にたくさん出てきますが、大胆に省略します。
あらすじ
全五段 鶴屋南北作
歌舞伎狂言「本町絲屋娘(ほんまちいとやのむすめ)」から浄瑠璃「絲桜本町育(いとざくらほんまちそだち)」ができ、その世界を書き替えた世話狂言。
「小糸・左七」「お房・綱五郎」「お時・九郎兵衛」の三組の男女の物語と赤城家の家宝が絡み合う物語です。
「小糸・左七」しか描いていないので残り二組は省略します。
「小糸・左七」の物語を大雑把ににまとめます。
深川仲町の売れっ子芸者・小糸は佐七のきっぷの良さに惚れ、恋仲になります。
ある時、小糸は佐七が実は武士の息子で勘当されて鳶になったこと、実父が紛失した家宝を探していることを知ります。
小糸にしつこく迫る男が家宝の行方を仄めかし、知りたければ佐七と縁を切れと言います。
小糸は左七のために、左七に偽りの愛想づかしを言います。
そうとは知らない佐七は小糸を殺してしまいます。
小糸の本心を知ったお祭り左七は、母の命日に出刃包丁で腹を切って死にます。
私のツボ
色・欲・殺し 、早変わり
入り組んだ人間関係、早変わりで一人二役もあるので、ますます混乱します。
実に41年ぶりの歌舞伎座上演ということで、勇んで臨みましたが、如何せん資料がありません。
大谷図書館で古い舞台写真(モノクロなので衣装の色がわからない!)やら筋書きやら衣装事典やら閲覧して、少ない資料をかき集め、絵にできたのがこの二枚です。
おまけに、当時はまだ南北初心者だったこともあり、頭が混乱して物語が理解できません。
佐七と小糸は「江戸育御祭佐七(えどそだちおまつりさしち)」で知っていたので、それを命綱になんとか物語の解読につとめましたが、理解するので精一杯でした。
今思うと、南北にしてはエログロが控えめなような気もします。
また機会があれば描きたいと思う演目です。
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