KNPC175「助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)」その3髭の意休

かぶきねこづくし

描かれている人物

*描いている人物が多く、説明も長くなるので分割します。
髭の意休(ひげのいきゅう)

絵の解説

助六に挑発され、刀に手をかける意休。

髭の意休(原画)

着付も羽織も同じ豪華な四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)の意匠。
地は黒繻子で、金糸 ・銀糸で細かい刺繍が施されています。
くりぬきの三枚歯下駄。

持参したMy煙草盆、刀掛け、描かれていませんが脇息もあります。

あらすじ

役の説明

・髭の意休(ひげのいきゅう)
たっぷりした白い髭が特徴のお大尽(金持ちの権力者)。
何事も金ずく力ずくなので、吉原でも嫌われている。
揚巻に横恋慕して通い詰めるが、振られ続ける。
正体は平家の残党で伊賀の平内左衛門(へいないざえもん)。
源氏打倒のために友切丸を盗んだ張本人。

あらすじ

吉原仲之町、三浦屋の格子先。
吉原一の人気花魁揚巻(あげまき)の元へは髭の意休が子分をつれて通ってきます。
助六の喧嘩沙汰を心配した母満江と白酒売りになった兄の十郎は、揚巻のところへ意見を頼みに来て、その真意を知ります。
助六があちこちで喧嘩を起こすのは、刀を詮議するためなのでした。
意休は助六の本心を見透かし、兄弟団結して親の敵を討てと意見をし、香炉台を切って見せます。
その刀こそ友切丸で、意休こそ伊賀の平内左衛門という盗賊だったのです。

はやる助六を、揚巻は意休の帰り際を待つようなだめるのでした。
ーー幕ーー
この後、水入りの場がつく場合があります。
意休を討った助六は、揚巻の気転で、刀を持って吉原を抜け出します。

私のツボ

体制側のシンボル意休

たっぷりした押し出しに、風流を解する教養人で、演目全体を引き締める漬物石のような存在なので個人的には大好きな役柄です。
助六や揚巻の怖いもの知らずの若さを受け止める大皿のような役割だと思っています。
それなのに助六にさんざんコケにされ、揚巻どころか吉原じゅうから嫌われ、悪の権化の様な扱われ方です。

助六の敵役というだけでなく、助六VS意休という図式には、町人VS武士、歌舞伎VS能楽という構図も織り込まれています。
だからこそ、庶民のヒーロー助六を際立たせるためにも意休はより”金と権力でどうとでもなると思っている嫌なジジイ”として描かれるわけです。

サブカルチャーも体制側のメインカルチャーが弱いと面白くないですからね。
やはり体制側の象徴としての意休には強い存在感で臨んでいただきたいものです。

意休が動いた!

揚巻に悪態をつかれても、助六にいじられても微動だにしない意休。
花道を歩いてきますし、煙管を吸ったりもしますが、大きな動きはありません。しかも無表情です。
意休を勤める俳優さんは大変だろうなと余計な心配までしてしまうくらい動きません。

が、助六に挑発されて、一瞬刀に手をかけます。
この時の意休の動きが早く、くわっと目を開いて表情にも動きがあります。
ただ座っているだけでは絵として面白くないので、動いた瞬間を描きました。

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