KNPC117「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」

かぶきねこづくし

描かれている人物

左:真柴久吉(ましばひさきち)
中央:山門の上の五右衛門と、柄杓で小柄(こづか)を受け止める久吉
右:石川五右衛門(いしかわごえもん)

絵の解説

大百(だいびゃく)という百日鬘(ひゃくにちかつら)、白塗りに芝翫筋、ビロードの着付に大褞袍(おおどてら)。
派手な衣装でキセルを吸う五右衛門。

石川五右衛門(原画)

対する久吉は爽やかな水浅葱の繻子(しゅす)の巡礼姿。柄杓は巡礼の必需品です。

真柴久吉(原画)

山門の上と下で睨み合う男二人。幕切の天地の見得。
石川や 浜の真砂(まさご)は尽きるとも 世に盗人(ぬすびと)の種は尽きまじ
久吉が柱に落書きした歌。

原画

あらすじ

「金門(きんもん / 後に楼門と改められる)五山桐」全五幕のうち二幕目の返し

主な登場人物と簡単な説明

・石川五右衛門(いしかわごえもん)
天下の大盗賊

・真柴久吉(ましばひさきち)
のちの豊臣秀吉

あらすじ

春爛漫の京の都、南禅寺の山門の上。
天下の大盗賊の石川五右衛門が桜を愛でています。
そこへ足に血染めの遺書が結び付けられた白鷹が飛来。
遺書を読んだ五右衛門は、自らが真柴久吉に討たれた大明国の宋蘇卿(そうそけい)の遺児であることを知ります。
父の仇である久吉を討つ決意をした時、山門の下から和歌を読む巡礼の声がします。
見れば巡礼姿の真柴久吉。
満開の桜の下、二人の男が睨み合い、幕。

私のツボ

歌舞伎のエッセンスが詰まった15分

幕が上がると浅葱幕。
その手前で大薩摩が演奏され、気分を盛り上げます。

浅葱幕が振り落とされると極彩色の山門に満開の桜。
桜吹雪の中、煙管を片手にした五右衛門がどっかと座っています。
ピロロピロロと差し金つきの白鷹が上手から飛んできます。
そして山門がせり上がり、真柴久吉が登場。

15分と短い時間ですが、歌舞伎の楽しさがぎゅっと凝縮された演目です。
瞬きするのも惜しいほど、客席も「絶景かな、絶景かな」です。

春宵一刻値千金

絶景かな 絶景かな
春の眺めは値千金とは 小せえ 小せえ
この五右衛門が目から見れば 値万両 万万両
(陽もはや西に傾きて 雲とたなびく桜花 あかね輝くこの風情)
はて うららかな眺めじゃなあ

()内は省略される場合、文言が違う場合があります。

二代目吉右衛門さんの五右衛門が大好きで、去年の三月も、今までも何度も観てきました。
たっぷりとした色気、凄み、厚み、大きさ、線の太さ。
桜を見る表情がとても無邪気で、五右衛門という男の心根は決して悪人ではなく純粋な人間なのだろうと思わせます。
二代目が演じる人物は、どこかに優しさの片鱗や痕跡があるように感じ、そこがとても好きでした。
実悪であろうと色悪であろうと、善人であろうと何であろうと、人間への愛を感じるのです。

あの舞台から一年。
たくさんの素晴らしい舞台をありがとうございました。

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