AKPC86 「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」③「田島町団七内の段」

もうひとつ

描かれている人物

赤枠右:お梶
同左:一寸徳兵衛
赤枠丸:市松
下:(左から)一寸徳兵衛、釣船三婦、団七九郎兵衛

絵の解説

徳兵衛の着物の綻びを直すお梶

義平次の仇をうつと息巻く市松、肌着姿の徳兵衛

徳兵衛と団七の諍いを止める三婦

2014年7月歌舞伎座、2013年10月松竹座、1997年7月歌舞伎座での公演を参考にして描いています。
衣装の色が実際と異なることがあります。

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・団七九郎兵衛(だんしちくろべえ)
魚屋。わけあって舅の義平次を殺してしまう。

・お梶(おかじ)
団七の妻。義平次の娘。

・市松(いちまつ)
団七とお梶の息子。

・一寸徳兵衛(いっすんとくべえ)
団七の義兄弟。

・釣船三婦(つりぶねのさぶ)
団七の世話人役の侠客。

あらすじ

田島町団七内の段(たじまちょうだんしちないのだん)
長町裏の惨事から7日経過したがまだ義平次殺しの下手人は捕まらない。
それ以来、団七は家にこもっている。
お梶は義平次の死を悲しみ、息子の市松は祖父の仇をとると息巻いていた。

そこへ団七の家に玉島に帰る徳兵衛が挨拶に来る。
徳兵衛は長町裏で拾った団七の雪駄の片方を見せ、義平次殺しに関係があるのか探り、いざとなったら身代わりを引き受けるとまで言う。
団七は何の話か分からないと突っぱね、奥へ引っ込む。

お梶は徳兵衛の着物の綻びを見つけて繕う。
肌着姿の徳兵衛は、突然お梶を口説こうとする。
怒った団七は住吉鳥居前で取り交わした片袖を投げ返して激しく争う。
そこへ釣船三婦が飛び込んで来て二人の仲裁をする。

徳兵衛と三婦は団七が義平次殺しの下手人だと察しており、尊属殺人の罰が妻子に及ばぬよう離縁させるために仕組んだ苦肉の策であった。
お梶も団七が下手人と察しており、団七と離縁する。

私のツボ

歌川国芳の”猫の狂言づくし”

猫版歌舞伎の元祖といえば歌川国芳。
もちろん私も大好きです。
国芳が描く猫版歌舞伎のうち演目の場面を描いた絵も何点かあり、こちらがその一例。
これを見た時に「夏祭浪花鑑」にこんな場面あったかしら?と謎に思いつつ、やがて忘却の彼方へ。
「田島町団七内の段」の舞台を観て、往年の謎が解けたのでした。

というわけで、国芳と舞台に敬意を表して絵にまとめました。

流行 猫の狂言づくし(歌川国芳 画)(天保39年(1839年)作 版元の川口屋宇兵衛)

歌川国芳

ここでの三人の見得は、「住吉鳥居前」での徳兵衛・お梶・団七を彷彿とさせます。
三婦が装着しているものは笠の丸輪です。
仲裁のはずみで笠と分離しました。
団七の額の傷は長町裏で義平次につけられたもの。
この傷をつけない演出もあります。

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