AKPC79 『蜘蛛の拍子舞(くものひょうしまい)』

もうひとつ

描かれている人物

赤枠上:白拍子妻菊実は葛城山女郎蜘蛛の精
赤枠右:蜘蛛と源頼光
赤枠下:葛城山女郎蜘蛛の精

※公演によって演出が異なります

絵の解説

妖しい笑みを浮かべる妻菊

四天王らと酒を酌み交わす頼光と、天井から登場した大蜘蛛
(大蜘蛛が登場しない演出もあります)

葛城山女郎蜘蛛の精
手にしているのは鉄杖(紅葉の場合もあります)

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・源頼光(みなもとのらいこう)
平安時代中期の武将。

・白拍子妻菊(しらびょうしつまぎく)実は葛城山女郎蜘蛛の精
刀鍛冶の三条小鍛冶の娘(自称)。
その正体は女郎蜘蛛の精。

他、碓井貞光、坂田金時などがいます。

あらすじ

※公演によって演出が異なります

主を失い荒廃した御所に物の怪が出るとの噂の真偽を確かめるべく、
源頼光は四天王らと警固に当たっていた。

頼光が四天王と酒を酌み交わしていると、天井から大蜘蛛が現れる。
驚いた頼光が鞘で突くと、怪気が漂い頼光と渡辺綱は気を失い、残りの二人は奥へ逃げる。

頼光が目を覚ますと、妻菊と名乗る美しい白拍子が現れて艶やかな踊りを舞う。
妻菊と共に拍子舞を踊る頼光と綱。
やがて灯火に照らされた妻菊の影が蜘蛛に見えたことから、二人は正体を見破る。

妻菊は女郎蜘蛛の精へと姿を変え、大立ち廻りを繰り広げる。
そこへ坂田金時が駆けつけ、女郎蜘蛛の精は討ち取られるのであった。
絵面の見得にて幕。

私のツボ

Glass Spider

歌舞伎座さよなら公演での「蜘蛛の拍子舞」がとても印象に残っており、
シネマ歌舞伎にもなったので何度か観たほど大好きな作品。

女郎蜘蛛の精、頼光、碓井貞光の三人の拍子舞は軽快なオペレッタのよう。
変化してからの妻菊とのギャップもさることながら、
手からシャーっと放たれる千筋の糸は心躍ります。

女郎蜘蛛の精は何をしに来たのか?
「土蜘蛛」のような”日本魔界化計画”といったような壮大な陰謀は無く、
ただ色仕掛けがどこまで人間に通用するのか試してみたかっただけでは、
と個人的には思っています。

蜘蛛界隈では知れた名の源頼光に密かに恋心を寄せていたのかもなどと推測してみたり。

後半の変化の激しさは、正体がバレてしまったことの悔しさが転じての激しさのようで、
人外であることの悲哀が感じられるようでもあります。
美しいけれど、どこか切なくて悲しい女郎蜘蛛の精。
そんな感想を持ったのが、このさよなら公演での「蜘蛛の拍子舞」。

デヴィッド・ボウイの「Glass Spider」をいつも思い出します。

もう一つ、印象に残っているのが巨大な蜘蛛の作りもの。
頼光が酒盛りをしているところに天井からスルスルと降りてくる蜘蛛、
間狂言での大蜘蛛の立ち廻り。
先述の通り、登場しない演出もあります。
この大蜘蛛がずいぶん毛深く、女郎蜘蛛というよりタランチュラのようです。
可愛いとは言い難いものの、愛嬌たっぷりのインパクト大です。

物の怪なので、通常の女郎蜘蛛とは異なる外見であってもおかしくはありません。
このタランチュラと妻菊と女郎蜘蛛の精が同じ人物(表象?)なのはなかなか面白いです。

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