絵の解説
異形のものたちに国境はない。
10月は人外魔境。
ハッピー・ハロウィン!
中央、右耳にお経を書き忘れている芳一。
左端の赤鬼が食べているのは雷おこし。
右端の半魚人のような猫は”深きものども” 。
その後ろのキノコは毒キノコのベニテングダケ。
中央の黒い布を頭から被ったような猫はスクリーム。
その左はコロナ禍でにわかに注目を集めたアマビエ様です。
お化けかぼちゃ
10月になると、にわかに街を彩るハロウィン・グッズ。
ハロウィン仕様のお菓子や、雑貨などが店頭に並びます。
いつの間にか浸透していて驚くイベントの一つがハロウィン。
もう一つは恵方巻き。
10月も2月もちょうど商戦の谷間だから、
と大人の事情が透けて見えますが野暮なことは言いますまい。
ハロウィンといえばカボチャをくりぬいたジャック・オー・ランタン。
もともとは白カブをくり抜いてランプにしていたアイルランドの文化がアメリカに渡り、
カボチャがよく獲れるのでカボチャに取って代わられたそうです。
カブは皮が柔らかいのでくり抜くのが大変そうです。
そんなハロウィンを代表するアイテムのカボチャですが、
日本にも江戸時代からお化けかぼちゃというものがありまして、
砂村の怨霊というカボチャのお化けです。
歌川芳員が描いた「百種怪談妖物双六(むかしばなしばけものすごろく)」に登場します。
累(かさね)の怨霊が木下川(きねがわ)を下って砂村新田(現在の江東区南砂付近)に流れ着き、
当時砂村の特産品だったカボチャに怨霊が乗り移って生まれたお化け。
歌舞伎の「東海道四谷怪談」の「蛍狩の場」にも舞台美術の小道具としてお化けカボチャが出て来ます。
竹の柵に絡まるカボチャの実がパカっと上下二つに割れて、
断面に人の顔が描かれた、いわば人面カボチャ。
この小道具がいつからあったのかは分かりませんが、
日本におけるジャック・オー・ランタンよりは古株だと思われます。
そんなカボチャ事情もあって日本でハロウィンが浸透しやすかったのかどうかは分かりませんが、
遠い異国と日本で、昔からカボチャが怪奇現象の1アイテムになっていたのはなかなか興味深いです。
「蛍狩の場」に出てくる人面カボチャがユーモラスで良い味わいなので、
もっとハロウィン商戦に食い込んで知名度を上げて欲しいです。
オーナメントにもおすすめです。
砂村の怨霊(歌川芳員「百種怪談妖物双六」1858年 東京都立中央図書館蔵)
人面カボチャ
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