AKPC32 供奴(ともやっこ)

かぶきねこづくし

描かれている人物

絵の解説

「仕て来いな」
花道七三あたりでの奴
手にしているのは祇園守の紋の入った箱提灯。
祇園守は成駒屋の紋、中村芝翫の定紋です。
文政十一年(1828年)、江戸の中村座で初演をつとめた二世中村芝翫にちなみ、
「供奴」を踊る時は、どの家でも祇園守の入った箱提灯を用います。
衣装の構成は同じですが、色は固定ではなく俳優によって異なります。

原画

長唄連中と奴

原画

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・奴(やっこ)
吉原通いの主人の供をして来たが、主人とはぐれてしまう

あらすじ

吉原通いの主人のお供をしていた奴。
主人とはぐれて慌てて田圃道を走ってくるところから始まる。

主人を探しながら、主人の自慢話をしたり、真似をしたり、
ついには主人がいる揚屋を通り過ぎて行ってしまうのでした。

私のツボ

足拍子

〽やっちゃしてこい今夜の御供

細かいことは無視した素人解釈ですが、と前置きをして、
歌舞伎の踊りは大きく”しっとり系””激しい系”に分けられます。
”しっとり系”は「保名」や「二人椀久」「鷺娘」など、
”激しい系”は「浮かれ坊主」や「石橋」、
足わざという点では「高杯」なども入れられるでしょう。

この「供奴」も”激しい系”で、観て聴いて楽しい大好きな踊りです。
なんと言ってもダンッダンッと響く足拍子の音が気持ちよく、
飛んだり跳ねたり切れ味抜群、胸がすくような心地よさがあります。

なお、舞踊の時は足拍子の音が出やすいよう、
桧(ひのき)の板で作られた所作台が舞台に敷かれています。

とにかく足さばきが軽やかで、トランポリンの上で跳ねているかのような軽やかさ。
速くて大きい動きなのですが、姿勢はもちろん、衣装も乱れません。
至高の芸に支えられた軽やかさを堪能する舞踊。

奴さんの衣装

歌舞伎の舞台では、とにかく派手な衣装の奴。
奴の衣装は演目によって微妙に変わりますが、
舞踊の場合は、
釘抜紋が刺繍された黒の着物に、房がついた派手な褌をつけ、
東からげ(尻はしょり)で足は丸出しです。
釘抜紋は奴のトレードマーク。
膝には三里あて、足袋に草履というスタイルが基本構成です。

着物の下は、首抜きの赤い襦袢。
首抜きの家紋は、俳優の家紋が染め抜かれ、金糸で縁取りされています。

褌の房の色は金糸が多いですが、緑と白、青系と白など役者によって様々です。

武士に仕える雑用係で、決して高い身分ではありません。
武家奉公に出された一般家庭の男子が多いです。
「仮名手本忠臣蔵」のおかるの兄・寺岡平右衛門も奴です。
武士階級に所属しながらも、奴の出自は平民なので、
庶民にとっては親近感を持ちやすい存在だったのかなと思います。
歌舞伎の演目でよく登場する奴が憎めない役どころが多いのはそのせいでしょうか。

とにかくド派手な奴さん。
子供の頃、折り紙でよく折ったなぁとふと思い出すのでした。

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