描かれている人物
上段:(左から)三浦之助義村、安達藤三郎実は佐々木四郎左衛門高綱、時姫
下段:(左から)三浦之助義村、安達藤三郎実は佐々木四郎左衛門高綱、時姫
絵の解説
姉さん被りに行灯を手にした時姫の出から舞台が始まることが多いです。
たまに長門が近所の女房たちと話しているところへ、北条方から局たちが時姫を迎えに来て、さらに藤三郎も来て、と言う場面から始まることもあります。
暖簾の柄は蕨(わらび)、田舎の侘び住まいに使われることが多く、
「寺子屋」や「野崎村」にも使われています。
傷を負いながらも館に帰ってきた三浦之助
鎌倉方の足軽藤三郎に化けた高綱。
額の青い印は、高綱ではないという証拠の刺青。
本編の前段「入墨の段」で、北条時政に入れられた。
三浦之助は戦場へ、時姫と高綱は北条時政の陣所へ乗り込む決意を示します。
あらすじ
「鎌倉三代記」七段目
主な登場人物と簡単な説明
・時姫(ときひめ)
北条時政の娘で、三浦之助の許嫁。
絹川村で三浦之助の母長門を看病しています。
*時姫、「本朝廿四孝」の八重垣姫、「祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)」の雪姫は三姫(さんひめ)と呼ばれ、姫君の大役とされます。
・三浦之助義村(みうらのすけよしむら)
源頼家を大将とする京方の重臣。
許嫁の時姫を信用していない。
・藤三郎 実は 佐々木高綱(とうざぶろう じつは ささきたかつな)
佐々木高綱に似ていると、北条時政に影武者の嫌疑をかけられた藤三郎という百姓。
別人と判明し、その証として額に入墨される。
時政の陣営で足軽頭になり、時姫奪還に絹川村へ来る。
しかし、正体は高綱であり、三浦之助と計略を企てていた。
本当の百姓藤三郎は、自ら進んで高綱の身替わりとなり「盛綱陣屋」の偽首となった。
なお、百姓藤三郎の妻おくるは夫が身替わりになったことも承知し、夫亡き後も高綱の命に従って行動している。
他、三浦之助の母である長門(ながと)、百姓藤三郎の妻おくる、阿波局、讃岐局、藤三郎のお目付け役の富田六郎などがいます。
あらすじ
北条時政の娘である時姫は、許嫁三浦之助の老母の世話をしています。
時政の使者として足軽藤三郎が時姫を迎えにきますが、帰ろうとしません。
三浦之助は、母が重病と聞き、自らも重傷の身で戦場から母の元に駆けつけました。
再会を喜ぶ時姫ですが、三浦之助は敵方の娘は妻にできない、嫁になりたくば父時政を討てと言います。
時姫は父時政を討つことを決意します。
それを見て、藤三郎は実は佐々木高綱であると身を明かします。
佐々木高綱は百姓藤三郎になりすまして北条の陣営に潜入、
全ては時姫に時政を討たせるための計略だったのです。
立っているのもやっとなほどの重傷を負っている三浦之助。
その姿を見た時姫は、決意も新たに槍を突き上げます。
すると、障子の中から長門が腕を伸ばして槍を掴み、自分の腹に突き刺します。
これで北条への義理は果たした。今度は我々への義理をたて、時政を討ち取ってくれと言い、長門は息を引き取ります。
おくるも夫を追って自害。
時姫はいよいよ覚悟を決め、高綱と共に時政の陣所へ攻め込む決意をします。
三浦之助もまた戦場へと戻るのでした。
私のツボ
このあとどうなる
たくさん人が死んでやりきれないので、このあとの顛末を調べました。
戦は京方の敗北、三浦之助は討死。
時姫は父を殺すことができず自害。
高綱も時政を討とうとしますが失敗、出家します。
頼家の息子の公暁丸(きんさとまる)を追って琉球へ落ち延びる結末もあるようです。
戦国時代の物語ですから仕方がないとはいえ、なんともやりきれません。
これは父と恋人の板挟みに苦悩し、恋する乙女(かなり積極的)から武家女房として覚醒する時姫と、
高綱の、前半と後半のギャップを堪能する演目なのだろうと思います。
やりきれないと言いつつ、時姫見たさに何回も観ています。
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