AKPC80 『春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)』

もうひとつ

描かれている人物

赤枠上:小姓弥生
赤枠下:獅子の精

絵の解説

獅子頭を手に舞う弥生

獅子の精の毛振り

牡丹の花

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・御小姓弥生(おこしょうやよい)
千代田城(江戸城)の大奥に仕える女小姓。

他、老女飛鳥井、局吉野、胡蝶の精などがいます

あらすじ

江戸城の大奥。
鏡開きの日、将軍の御前で踊りを所望された小姓弥生は恥じらいながらも舞を披露する。
やがて祭壇の獅子頭を手にした弥生に、獅子の精が乗り移り、獅子の狂いを見せ始める。

私のツボ

超自我の踊り

変身前と変身後の構図。
変身後の獅子の精は、獅子頭に宿る獅子の精が弥生の肉体に憑依した姿ですが、
興味深いのは女性から男性に性別が変わっていること。
「鏡獅子」の元ネタである「枕獅子」や「英執着獅子」は変身後の衣装が引き抜きなのもあり、
獅子のかしらは付けていても踊りの動きには女性らしさが残っています。

ところが「鏡獅子」は弥生が一旦引っ込んで衣装を変え、
前半は女形、後半は立役と完全に性が変わります。

色々な解釈があるとは思いますが、私は弥生の中の男性性に獅子の霊力が反応して、
本人(肉体の持ち主)も認識していなかった男性性が具現化した、と解釈しています。
フロイトが言うところのエス(es)の領域、超自我の踊りと捉えると、なかなか面白い演目だと思います。

言うなれば、覚醒した弥生とも取れ、獅子の精が弥生から離れたとして
覚醒後の弥生は果たして御小姓として満たされるのかどうか、
まで想像を膨らませると、これまた楽しいです。

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