左:八ツ橋
赤枠上:繁山栄之丞
赤枠下:佐野次郎左衛門
絵の解説
左:八ツ橋を斬った後、刀を手にする次郎左衛門
右:八ツ橋に意見する栄之丞
八ツ橋の花魁道中(修正前)
修正パーツ
帯から下がる組紐の本数も減らしてあります。
あらすじ
主な登場人物と簡単な説明
・佐野次郎左衛門(さのじろざえもん)
佐野の豪商。親の因果のせいであばた顔だが、純朴で誠実な人柄の男。
・兵庫屋八ツ橋(ひょうごややつはし)
吉原の妓楼兵庫屋の花魁。
・繁山栄之丞(えいのじょう)
浪人。八ツ橋の間夫。
他、釣鐘権八、吉原の引手茶屋立花屋の主人夫婦、九重、七越、初菊などがいます。
あらすじ
上州佐野の絹商人、あばた顔の佐野次郎左衛門と下男の治六は、
江戸で商いをした帰りに吉原へ見物にやってきます。
そこで吉原一の花魁八ツ橋の道中と遭遇した次郎左衛門は、
八つ橋にすっかり魂を奪われてしまいます。
それから半年、田舎者ながら人柄も気前も良い次郎左衛門は、
八ツ橋のもとへ通い、遂には身請け話も出始めます。
これを聞きつけた八ツ橋の親代わりの釣鐘権助は、
八ツ橋の間夫・繁山栄之丞をたきつけて次郎左衛門との縁切りを迫ります。
追い詰められた八ツ橋は万座の中で次郎左衛門に然愛想づかしをします。
恥をかかされた次郎左衛門はうちひしがれて帰っていきます。
それから四ヶ月後、次郎左衛門は再び吉原に現れ、
妖刀「籠釣瓶」で八ツ橋に復讐するのでした。
私のツボ
八ツ橋に狂わされた二人の男
男を狂わせる八ツ橋の微笑みと、八ツ橋によって運命を狂わされた二人の男、
という構図。
以前、かぶきねこづくしで二点描いていますが、
かたやシンプル過ぎ、かたや盛り込み過ぎで、
機会があればまた描きたいと思っていた作品。
花魁道中の八ツ橋、大きな傘と、満開の桜。
これを描きたかったので、八ツ橋を中心に、
余白に彼女と大きく関わる男二人を配置しました。
二人の男、栄之丞と次郎左衛門。
どの場面を描くか。
次郎左衛門は一線を越えてしまった後。
ある意味、八ツ橋によって引き出された彼の隠された一面とも言えます。
栄之丞はただのヒモなのですが、色男だからこそヒモになりうるわけで、
ダメ男特有の退廃的な色気もあり、つまるところ良い男です。
八ツ橋に会いに来るところだったか、襖を背に立っている姿が
無表情で、冷たくてとても素敵なのですが、動きが欲しいので
煙草を嗜んでいるところとしました。
上演頻度が高いので見る機会が多い「籠釣瓶」。
八ツ橋が可哀想だと思っていたのですが、何度か見るにつけ、
八ツ橋に関わってしまった二人の男の方が可哀想かも、と思うようになりました。
次郎左衛門は言わずもがなですが、栄之丞は寄生先が無くなってしまい、
どうせまた新しい女を探すのだと思いますが、
そうやって寄生しなければ生きていけない弱い男にしてしまったのも
八ツ橋のせいともいえ、これもまた悲劇です。
やりきれないねぇ、と言いつつ、かかると何度も観にいってしまうのでした。
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