描かれている人物
（左から）濡衣、長尾謙信、八重垣姫
絵の解説
幕切の見得。
濡衣と八重垣姫を制する謙信
原画
あらすじ
主な登場人物と簡単な説明
・花作り蓑作実は武田勝頼（はなつくりみのさく 実は たけだかつより）
武田信玄の息子。
花作り蓑作と偽って長尾家に潜入。
目的は長尾家に奪われた武田家の家宝を取り戻すため。
・八重垣姫（やえがきひめ）
御所五郎蔵の女房。
巴之丞の旧恩に報いるため傾城づとめをしている。
・濡衣（ぬれぎぬ）
武田家の腰元。
武田勝頼実は蓑作（つまり偽の武田勝頼）と恋仲だった。
蓑作実は勝頼（本物の勝頼）と長尾家に潜入している。
・長尾謙信（ながおけんしん）
越後の国の大名。
甲斐国の大名・武田晴信（のちに信玄）から借りた”諏訪法性の兜”を借りたまま
返さないので武田家と敵対。
和睦を図るため、娘の八重垣姫と信玄の息子・勝頼を許嫁とする。
他、白須賀六郎、原小文治などがいます。
あらすじ
十種香の場
長尾家の館。
長尾謙信の娘・八重垣姫が切腹した許嫁・勝頼を弔うため、
十種類の名香を炊いて絵姿に手を合わせていた。
腰元の濡衣も別室で、亡き恋人・勝頼（偽）を回向していた。
そこへ長尾家に召し抱えられた花作り蓑作が登場。
勝頼の絵姿に瓜二つの彼を見て、八重垣姫は恋に落ちる。
姫は濡衣に恋の仲立ちを頼むが、濡衣はそれと引き換えに”諏訪法性の兜”を要求する。
そして蓑作の正体が本物の勝頼であることを明かす。
長尾謙信がやってきて蓑作を塩尻に使いに出す。
謙信は蓑作の正体を見破っており、
二人の武者（白須賀六郎、原小文治）を討手として差し向ける。
私のツボ
シメの長尾謙信
音羽屋型の演出での幕切。
衣装といい、舞台美術といい、絢爛豪華な演目ですが、
そのトドメとも言えるのが長尾謙信。
今見ると謙信に慣れてしまったのか、さほど驚かないのですが、
初めて観た時、あまりにも強烈なビジュアルすぎて、
思わず舞台写真を買ってしまった一枚がこの見得です。
禿頭だからか化粧が際立ち、衣装の色調も茶〜ゴールド統一したメタリック系で
どうしてもジョージ・クリントンのパーラメントを想起してしまうのでした。
ちょっと宇宙ぽいというか、謙信からはPファンク味を感じてしまいます。
単にビジュアルがサイケデリックというだけでなく、
その圧というか、存在感がとにかく濃く、太い。
押し出しの強い武将はよく登場しますが、長尾謙信は独特です。
八重垣姫の熱情も、謙信が父なら理解できるというものです。
派手に派手を重ねて派手で締める。
物語の筋はさておき、豪華な色彩に溺れる舞台です。
私の場合は、です。
なお、文楽の謙信は初老の戦国大名といったノーマルな風体です。
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