AKPC64「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」十種香の場①

もうひとつ

描かれている人物

上:(左から)武田勝頼、八重垣姫
下:濡衣

絵の解説

勝頼を想うあまり、刀を奪って死のうとする八重垣姫と困惑する勝頼

亡き夫の血がついた布を手に涙ぐむ濡衣

庭の泉水を泳ぐ鴛鴦(音羽屋、三代目雀右衛門の型)

入りきらなかった御仁お二人
左から、白須賀六郎、原小文治

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・花作り蓑作実は武田勝頼(はなつくりみのさく 実は たけだかつより)
武田信玄の息子。
花作り蓑作と偽って長尾家に潜入。
目的は長尾家に奪われた武田家の家宝を取り戻すため。

・八重垣姫(やえがきひめ)
長尾謙信の息女。武田勝頼の許嫁。

・濡衣(ぬれぎぬ)
武田家の腰元。
武田勝頼実は蓑作(つまり偽の武田勝頼)と恋仲だった。
蓑作実は勝頼(本物の勝頼)と長尾家に潜入している。

他、長尾謙信、白須賀六郎、原小文治などがいます。

あらすじ

十種香の場
長尾家の館。
長尾謙信の娘・八重垣姫が切腹した許嫁・勝頼を弔うため、
十種類の名香を炊いて絵姿に手を合わせていた。

腰元の濡衣も別室で、亡き恋人・勝頼(偽)を回向していた。

そこへ長尾家に召し抱えられた花作り蓑作が登場。
勝頼の絵姿に瓜二つの彼を見て、八重垣姫は恋に落ちる。
姫は濡衣に恋の仲立ちを頼むが、濡衣はそれと引き換えに”諏訪法性の兜”を要求する。
そして蓑作の正体が本物の勝頼であることを明かす。

長尾謙信がやってきて蓑作を塩尻に使いに出す。
謙信は蓑作の正体を見破っており、
二人の武者(白須賀六郎、原小文治)を討手として差し向ける。

私のツボ

十種香の型

「十種香」といえば絢爛豪華な衣装と舞台。
赤姫の赤、勝頼の紫、濡衣の黒。
勝頼の着付けは赤とひわ色(淡いピンク)と2種類ありますが、
どちらにしても華やかな色合いです。

武者の衣装も、幕切に出てくる長尾謙信も派手で、とにかくコテコテしています。

舞台は通常、白木造に絵襖ですが、
黒塗りの瓦燈口(かとうぐち)の場合もあります。
『義経千本桜』「川連法眼館」が瓦燈口で、
寺の窓のような曲線の出入り口が中央に据えられています。
瓦燈口は、だいたい立湧(たてわく)文様と、
紗綾形(さやがた)文様の幕が下がっています。

さらに、上手下に池を作って鴛鴦を浮かべます。
この演出は音羽屋型と言われていますが、
三代目雀右衛門の夫人が六代目菊五郎に教えた型で、
もともとは三代目雀右衛門の型のようです。
鴛鴦はオプションのようなもので、浮かべない場合もあります。

中央に衝立が置かれますが、こちら通常は雪持ち枯れ木に鵲(かささぎ)。
この衝立が雪持ち梅になりますが、六世梅幸の芸談によると
「人々の好みで色々あります」だそうで、一定ではないようです。
柳にキツツキの衝立もあるようですが、私は見たことがありません。

音羽屋の演出の舞台を見たのは大昔に一度だけですが、
珍しいのもあって印象に残っています。
瓦燈口の奥のカーテンのような幕が、いかにも芝居ぽく、
どことなく古風な味わいでなかなか良いものです。

というわけで、音羽屋型の舞台演出でまとめました。

柱巻きなど、動作としての型は、大まかにはどこの家も同じようです。

昔一度だけ見た時、鴛鴦はいなかったのですが、せっかくなので配置。
すると使いのお二方が入らなくなってしまい、
結果、勝頼と、彼をめぐる二人の女という構図になりました。

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