Vol.25 近藤れん子先生のこと#06

ドレスメーキング

Moulage(ムラージュ)

立体裁断クラスの最初の授業は、ムラージュ作りでした。

ムラージュとは直訳すると、医療教育用の模型のことで、
それが転じて洋裁では”身体にフィットしたボディスーツ”を意味します。

ボディに布を乗せてハサミとピンで組み立てて行きます。
れん子先生がパリで通っていた服飾学校でも一番最初に授業で行ったそうで、
立体裁断の基本中の基本のレッスンとのことです。

印象的だったのは、先生が今でも折に触れてムラージュを作ること。
「立体裁断の原点に立ち返る時間です。
組み立てている間は無心になれてリセットできるの。
布と私とダミー(ボディのこと)だけの時間。」

これを聞いて思い出したのが、
印象派の画家のルノワールが花の絵を描くのが好きだったこと。
花瓶に生花をいけて、3時間くらいほどで描き上げるという逸話。

ルノワール曰く(大意です)
花の絵を描くことはストレッチのようなもので、
純粋に絵を描く楽しさを思い出させてくれる、
花が萎れる前に、太陽が傾く前に、一気に仕上げる。

というような逸話を読んだことがあります。
出典は忘れました。

リラックスのために絵を描いたり、服を作る、という感覚は私にはなく、
私の場合は「これを描きたい」や「この服が欲しい」など欲が先に来ます。

ルノワールもれん子先生も、
欲を超越した創作の次元にいるようで、すごいな、と感動したのを覚えています。

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