描かれている人物
右:仙石伯耆守
左:大石内蔵助
絵の解説
左:仙石伯耆守の屋敷を後にする内蔵助
右:立ち去る内蔵助を見送る仙石伯耆守
仙石屋敷の庭の松、高張提灯をもつ近習
あらすじ
主な登場人物と簡単な説明
・大石内蔵助(おおいしくらのすけ)
赤穂藩の国家老。
浅野内匠頭の江戸城刃傷事件によってお家取り潰しとなるが、
約1年半後、
47名の赤穂浪士たちの頭領として仇討ちの悲願を達成する。
・仙石伯耆守(せんごくほうきのかみ)
幕府大目付の旗本。善人。
赤穂浪士たちから討入りの報告を第一に受ける。
他、大内主税、赤穂浪士たち、用人などがいます。
あらすじ
仇討ちを達成した大石内蔵助は、
部下の吉田忠左衛門と磯貝十郎左衛門に幕府大目付の仙石伯耆守の役宅へ報告に向かわせる。
伯耆守は、天下の裁きを受けたいと言う浪士たちの姿勢に感服し、丁重に扱う。
仇討ちの聞き取りをし、幕府に報告すべく登城する。
その晩、大石内蔵助はじめ赤穂浪士たちが泉岳寺から仙石屋敷に身柄を移される。
伯耆守は内蔵助らと対面し、討入りの様子を問いただす。
浪士たちの明白な申し開きと、その心根に伯耆守はじめ役人一同納得し、満足する。
浪士たちは諸家へ預かりとなり、出立する。
伯耆守は内蔵助の働きを褒め称えて、これを見送る。
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私のツボ
浪士たちの衣装
真山青果原作の新歌舞伎。
真山青果らしく、セリフの応酬が見どころで、
動きは少ないですが静かに熱い舞台。
とりわけ伯耆守と内蔵助、内蔵助と息子・主税のやりとりが眼目ですが、
一番私の記憶に残っているのは、浪士たちの衣装。
「仮名手本忠臣蔵」でお馴染みの雁木模様の衣装ではなく、
幅広の白い布を縫い付けただけのもの。
史実では11月初め頃に、
内蔵助から討ち入り時は黒い小袖、股引、脚袢、わらじ着用との指示が下ります。
それ以外の細い指示はなく、
実際には歌舞伎の舞台のように揃いの衣装ではなかったと言うのが定説です。
研究者の間で意見が分かれるところなので、それ以上は深掘りしません。
話を戻して、
「仙石屋敷」での討入衣装は、雁木模様のような派手さはありませんが、
これならば袖に白い布を縫い付ければ衣装が統一できるので、
かえってリアリティがあるように感じられるのでした。
これはこれでスッキリして良いデザインだとも思います。
加えて、内蔵助はじめ浪士たちが素足であること。
雪で足袋が濡れたため脱いだのかもしれませんが、
仮にそうだとして、なんと細かい演出でしょう。
素足に触れる冷たい雪は、興奮した浪士たちにはむしろ心地よかったのかもしれません。
などなど、指先からいろいろなことが連想され、非常に印象に残っています。
歌舞伎の娯楽性の少ないと言われることの多い演目ですが、
伯耆守と内蔵助は、
「勧進帳」の冨樫と弁慶のようで、
じゅうぶん歌舞伎らしい演目だと思います。
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