描かれている人物
御所五郎蔵の子分
左から:畠山次郎、二宮太郎次、秩父重介、新貝荒蔵、梶原平三
星影土右衛門の門弟
左から:蟹塚素兵太、穴生多九六、鮫津五平次、荒波喜六太、大師平内
絵の解説
五郎蔵の子分たち
土右衛門の門弟たち
巴之丞の正室・撫子
遠山尼(巴之丞の母)の法要に参加した帰り
医師武隈鈍玄
時鳥のところへ化けて出たところ
花形屋悟助
七三で五郎蔵の真似をしているところ
簡単な説明と登場する場面
簡単な説明
・御所五郎蔵の子分たち
揃いの衣装を着ている。
着物の柄は公演によって異なる。
白い手拭いを肩にかけている場合もある。
・星影土右衛門の門弟たち
縞の袴に帯刀スタイル。
足を大きく開いて座るのがポイント。
・撫子(なでしこ)
百合の方の娘で、巴之丞の正室。
あまり登場しない。
・武隈鈍玄(たけくまどんげん)
医師。百合の方に命令されて時鳥に毒を盛る。
報酬をもらいに行ったら殺されてしまう。
成仏できず、
百合の方を裏切って時鳥に治療薬を届けに行く。
・花形屋悟助(はながたやごすけ)
花形屋の番頭。
五郎蔵に借金の取り立てに来る。
劇場の空気を和ませるチャリ役。
登場する場面
五郎蔵の子分
「五條坂中之町甲屋の場」と「五郎蔵内腹切の場」。
土右衛門の門弟
「五條坂中之町甲屋の場」と「同奥座敷の場」。
撫子
「奥州北上川の場」
1983年10月国立劇場での上演より。
基本的には登場しません。
医師武隈鈍玄
「奥州北上川の場」「浅間家館の場」あたり。脚本による。
生身の人間と、幽霊で登場。
花形屋悟助
「五條坂中之町甲屋奥座敷の場」
私のツボ
それぞれの魅力
歌舞伎を見る楽しさは色々ありますが、
手堅い脇役陣を見るのも楽しいです。
脇役といってもその存在感は大きく、
ほんの少しの登場やセリフだけでも強い印象を残します。
出過ぎず、引きすぎず、それでいて舞台に奥行きが出る。
うまいなぁといつも思います。
そしてほぼ全員名前があることも楽しくて、
凝った名前からやっつけ感のある名前もあり、
それを観劇後に調べるのも楽しいです。
というわけで、今回は脇を固める大好きな登場人物を集めました。
以下、それぞれの魅力。
御所五郎蔵の子分たち
「助六」の髭の意休の子分たちのように、ビシッとした男伊達でかっこいいです。
それに尽きます。
名前の由来は推測ですが、梶原平三、畠山、秩父は鎌倉武士から、
二宮は曽我物語の舞台の一つとなる二宮(神奈川県中郡二宮町)から、
新貝荒蔵は「源平盛衰記」に登場する新貝荒次郎実重に由来するのではと思います。
曽我物語を連想するようなネーミングということだと思います。
こうやって重箱の隅をつつくと何かしら出てくるのも歌舞伎の魅力の一つ。
星影土右衛門の門弟たち
無骨な武士ということで、ガニ股がポイントです。
奥座敷では、土右衛門を先生と持ち上げ、はしゃいで酒宴を盛り上げる様は、
上司のご機嫌をとるサラリーマンのようで、
似たような光景を現実世界でも何度も見たことがあるなぁ、など感慨深くなります。
各々、名前の由来は不明ですが、
大師平内の平内は粂の平内という江戸時代の剣術家かな?と思います。
歌川国芳が何点か武者絵を残しています。
撫子
原作では撫子が時鳥を殺害するなど目立った役どころですが、
歌舞伎ではほぼ登場しません。
1983年10月国立劇場での上演では、そこまで踏み込んだ性格描写はなく、
根は悪人ではない程度。
母親の百合の方が強烈すぎて巴之丞も離れていってしまったのでは、
などと邪推したくなります。
医師武隈鈍玄
毒薬を盛るという職業倫理に反する行為をしつつも、
百合の方に裏切られるや、
毒薬を盛った相手(時鳥)に治療薬を届ける変わり身の速さ。
とはいえ、死んでしまった後では元も子もありません。
良心の呵責なのか、はたまた百合の方への意趣返しなのか、
おそらく後者だろうと思います。
百合の方に化けて復讐しなかったのは、
幽霊の力をもってしてもおそらく敵わないと判断したからでありましょう。
悪いやつにまんまと利用されてしまう、
心よわき小市民といった人がよく歌舞伎には出てくるのですが、
彼もまたその一人。
毒の調合も、その解毒剤の効果もテキメンだったので、医師としての腕前は確かなようです。
花形屋悟助
七三で五郎蔵の真似をして笑いを誘うお茶目な御仁。
平和な笑いで、この品の良いぬるさも歌舞伎の良いところ。
他にも按摩や、料理を運ぶ人など、色々楽しい役どころが登場しますが、
キリがないので、本日はこれぎり。
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