描かれている人物
手前:(左から)須崎角弥、皐月
赤枠:星影土右衛門
絵の解説
浅間家から暇をもらい、都へと旅立つ二人
二人を追う星影土右衛門
あらすじ
主な登場人物と簡単な説明
・須崎角弥(すざきかくや)
巴之丞の家臣。
腰元の皐月と恋仲になる。
後の御所五郎蔵。
・皐月(さつき)
浅間家に仕える腰元。
・星影土右衛門(ほしかげどえもん)
浅間家の剣術師範。
皐月に横恋慕している。
他、金貸し金兵衛などがいます。
あらすじ
長福寺門前
北上川ほとり。
旅姿の須崎角弥と皐月が都へ向かおうとしていた。
角弥は巴之丞に仕える武士だったが、同僚の皐月と恋仲になる。
皐月に横恋慕する星影土右衛門は、不義密通の罪だと騒ぎ立てる。
巴之丞の母・遠山尼の温情により、角弥と皐月は死罪を免れ、追放処分となった。
そのような経緯で奥州を離れる二人の前に、金貸し金兵衛が借金の取り立てに現れる。
角弥は町人に刀は不要と、金の代わりに刀を渡す。
そんな二人の姿を、星影土右衛門が物陰から見ていた。
彼もまた、騒動を起こしたとして追放処分になっており、二人の後を追うのだった。
私のツボ
道行
御所五郎蔵が須崎角弥だった頃の話。
「長福寺門前の場」の冒頭部分。
二人と星影土右衛門が立ち去った後、寺から猿島と鈍玄が出てきて百合の方のお出ましとなります。
須崎角弥と皐月の場面は10分にも満たない短さですが、
後半の御所五郎蔵と皐月を思うとなんとも感慨深いです。
五郎蔵が皐月を傾城にしてまで支えようとした巴之丞。
その母・遠山尼が二人の命の恩人だったればこそ。
本来なら不義密通は死罪に値します。
筋書きにそのように書いてありますが、どうも文字だけではあまり印象が残りません。
やはり新天地目指して旅立つ二人を目の当たりにすると説得力が増します。
武家社会から町人社会へ。
御所五郎蔵と傾城皐月の人生はここから始まったとも言えます。
というわけで、短い場面ながらも絵にしました。
旅立つ二人はさながら、おかる・勘平のよう。
広がる青空と山並み、見つめ合い、駆け落ちする二人。
道行のような、歌舞伎ならではの大好きな構図。
二人を追う星影土右衛門は、愛嬌の無い鷺坂伴内といったところでしょうか。
土右衛門の、五郎蔵に対する恨みはなかなか根が深いことも分かる場面。
失恋のみならず失職までしたとあれば、五郎蔵を執拗に追うのも理解はできます。
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