絵の解説
博多三大祭といえば、
春の博多どんたく、夏の博多祇園山笠、そして秋の筥崎宮放生会(はこざきぐうほうじょうや)。
万物の生命を慈しみ、殺生を戒め、秋の実りに感謝するお祭り。
鳩の形をした風船を飛ばして、
お稚児さんたちが鯉を池に放つ、放生の神事。
その下の行列は”幕出し行列”と呼ばれるもの。
明治・大正から昭和初期の頃、商家や町内会が放生会に繰り出して、
浜の松原に大きな幕を張って大宴会をしました。
長持ちの中身は宴会の料理や食器。
戦後、有志によって復活されました。
行列の先頭の男性が手にしている青い葉っぱは新生姜の葉。
放生会のお土産といえば新生姜。
もともと筥崎宮周辺は生姜の産地だったことにちなみます。
参道には約500軒もの露店が並んで、
見世物小屋、射的場、輪投げ、うなぎつりと賑やかな三日間。
博多三大祭
どんたくを描いて、山笠ときたら、放生会でしょう。
ということで放生会。
放生会と収穫祭が合体したような、秋のお祭り。
改めて筥崎宮放生会を調べてみて、
独特で興味深いと思ったのが幕出し行列。
博多町人文化連盟という団体が70年代に行列を復活させて今に至ります。
放生会の主役は商家のごりょんさん(おかみさん)たち。
放生会着物(ほうじょうやぎもん)という言葉もあって、
放生会にあわせて新調した着物のことです。
着物を新調する理由は、7月の祇園山笠で男たちが出ずっぱりで、
商売や家のことを女性陣に任せっぱなしだったことを労ってのこと。
祭りを巡ってwin-winの関係が築かれているのが面白い。
7月は旦那衆が主役で、9月はごりょんさんが主役。
着物を新調すれば呉服屋も儲かって博多の経済も回る。
博多商人の心意気を見るようです。
幕出しの風習は昭和初期の頃に廃れていくのですが、
一番の要因はなんといっても世界恐慌による不況。
他に挙げられた原因が、浜の松が枯れて幕が張れなくなった、
秋の運動会に宴会が取って代わられたという直接的なものもあって、
その自然な成り行きもまた面白い。
お祭りは人が担うもの。
地域で長く続くお祭りなどの由来を調べると、
その地域ならではの特色が見られるのが面白く、
また、人々の郷土愛が感じられて温かい気持ちになります。
環境や時代の変化とともに祭りのあり方も変わっていきますが、
人の、季節や郷土を愛でる心はそうそう変わるものではなく、
愛ゆえに変化を受容し、受け継がれていくのだろうと思います。
その軌跡がやがて伝統となるのでしょう。
などと、夏の終わりに思いつつ。
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