絵の解説
〽 此の世の名残り、夜もなごり
街の灯りが道頓堀川の水面に揺れて
夏の名残の船遊び
8月の終わり
大阪といえば道頓堀。
道頓堀といえばグリコを筆頭にした大きな看板。
陽が落ちると大きな看板がとにかく派手で、明るい。
その道頓堀の賑わいを描きたかったのですが、
看板群をそのまま描くのではヒネりがなくて物足りない。
というわけで、
ネオンサインが川面に映る道頓堀の様子という構図にしました。
絵を描きながら頭の中でぐるぐる再生されていたのが『曾根崎心中』の道行の詞章。
道行の詞章なので、心も空に影暗く、な内容ですが、
七五調で耳に心地よく、名文です。
〽 空も名残りと見上ぐれば
雲心なき水の音
北斗は冴えて影映る
星の妹背の天の河
都会の夏の夜空に星は見えませんが、
川面にはネオンサインが映り、
さながら天の川のよう。
夜が明けたら喧騒と共に消える儚い光。
あまりの暑さに夏よ早く終われと思っていた毎日ですが、
いざ8月も終わりとなると俄かに夏が名残惜しくなる。
うるさかった蝉の鳴き声も、痛いほどの太陽の日差しも、
茹だるような暑さも、滝のように流れる汗も
喉元過ぎればなんとやらで恋しくなってしまう。
どのみち9月に入っても残暑は厳しく、まだまだ暑い日が続くのですが、
8月の最終週は、ついそんなセンチメンタルな気分になるのでした。
そんな絵です。
〽 いつはさもあれ此の夜半は
せめてしばしは長からで
心も夏の夜のならひ
コメント