Vol.21 近藤れん子先生のこと#05

ドレスメーキング

ヌーベル・ダミー

東京立体裁断研究所では、先生が開発したオリジナルのボディを使っていました。
9号に相当するB体、11号に相当相当するC体、プラスサイズのL2体の3体があり、
授業では主にB体とC体を使っていました。
ゆとりの入っていないヌードサイズのボディです。

ヌーベル・ダミーが開発されたのは80年代なので、かれこれ40年近く経っていますが、
実際のサイズの平均値に多少の変化はあれど、全体のバランスはさほど変わっていないように感じます。
時代とともに日本人のスタイルも変化しますが、
だからと言って欧米人によく見られるようなボリューム豊かな尻にはならず、
そこまで骨格は大きくは変化しないのではないかと思います。

ヌーベル・ダミーの表面はシーチングで覆われていますが、石膏製なので重くて硬いです。
ピンが刺さらない。
ヌーベル・ダミーを購入する前すなわち研究所に通う前は、
発泡スチロール製のボディを使っていました。
こちらは軽くてピンもサクサク刺さります。
つい癖で石膏製のボディにピンを刺そうとして、曲げてしまったピンは数知れず、
慣れるまで少し時間を要しました。

石膏製のボディにした理由は、先生によれば、まず安定感があること。
ドレーピング(立体裁断)はボディの上で布を裁断したり引っ張ったりするので、
ボディにある程度の重量がないと操作しづらいこと。

次に、強度。
スチロール製のボディは耐久性が弱く、ピンの打ちすぎて脆くなってしまうこと。

そして、何より大事なのが、ボディを人間の身体だと思うこと。
人間だと思えば、ピンを刺したりしない。
癖とは怖いもので、
ピンを刺すことに慣れてしまうと、仮縫いの際に、
顧客の肌にピンを突き刺しかねないとも言えない。
常に、人間の身体を意識して服を作ること。

というようなことを仰られて、
なんというかその意識の持ちよう、
服を作ることへの向き合い方に感銘を受けました。

無意識を出来る限りコントロールすること。
一見、難しいことのように思えますが、
日常的な所作の積み重ねなのだと思います。
その積み重ねることが難しいのですが、不可能ではない。
まずは、意識すること。

れん子先生から多くのことを学びましたが、これも学んだことの一つです。

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