描かれている人物
赤枠左:(後方)お梶、(手前)喜撰法師
赤枠右:喜撰法師
下:舞台の様子
絵の解説
お梶と喜撰法師
喜撰法師
左:姉さん被りの喜撰
右:花道の出
姉さん被りの喜撰はお蔵入りのお蔵入りです。
イラストカットは3コマまでという制約があるのですが、
背景もコマに含まれるということで却下になりました。
背景
あらすじ
「六歌仙容彩」のうち「喜撰」
主な登場人物と簡単な説明
・喜撰(きせんほうし)
とある寺の高僧。
モデルは百人一首でお馴染みの喜撰法師。
・お梶(おかじ)
祇園の茶汲み女
そのほか、お迎え坊主たちがいます。
あらすじ
桜満開の春の京都。
花道から喜撰法師が桜の枝に瓢箪をからげて登場。
そこに茶汲み女・祇園のお梶が出てきて喜撰が絡んで二人のクドキ。
喜撰のちょぼくれ。
お梶が上手に引っ込むと、
花道からお迎え坊主たちが長柄の大きな傘を持って迎えに来る。
全員で住吉踊り。
姉さん被りで悪身(わりみ:女の振りで滑稽に踊る)、全員で総踊り。
私のツボ
軽妙洒脱
「六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)」のうちの一つで、
もともとは一人の役者が6人を早替わりで踊る変化物(へんげもの)です。
その中で、単体で上演されることが多いのが「喜撰」。
「六歌仙」では小野小町とそれに絡む歌人という筋立てで、
「喜撰」ではお梶が小野小町の代わりとなります。
と、そんな演目にまつわる云々カンヌンはさておいても楽しめるのが「喜撰」。
酒が入った瓢箪をくくりつけた桜の枝を肩に引っ掛けている姿
これだけでもう個人的にはツボなのですが、喜撰法師が歩くと、
まるで春の柔らかい風がふわっと立つような、楽しい気分になります。
まさに眼福、眼福。
ただ花道を歩くだけなのですが
ふわふわ〜っとっているような、
滑るような足取りで、ここが一番好きな場面。
というわけで、花道の出は外せないので描きました。
カット数の制約があるので何を描くのか悩むところですが、
お梶は外せないのでお梶とのカラミ。
桜満開の景色も欠かせないので、背景を描いたらコマ数が満席になってしまいました。
願わくばお迎え坊主こと所化たちと長唄も描きたいところですが、
そこは仕方ありません。
喜撰法師は毛深いのか、鼻の下と顎が青いのがポイントです。
かぶきねこづくしの喜撰法師はマズルだけ青くしました。
お蔵のお蔵
かぶきねこづくし(R)を制作するにあたっては、描き方の制限があります。
今回、「喜撰」の花道の出とお梶との絡みは外せないのですが、
それ二つのカットだけでは喜撰法師の真髄が伝わらないと思うので、
姉さん被りも配置する予定でした。
背景か姉さん被りのどちらか一つにしてください、ということで、
構図のバランスを鑑みて舞台美術を配置しました。
姉さん被りの喜撰は下絵を描いていたので、そのまま仕上げました。
それが、お蔵のお蔵となったわけです。
個人的には、高位の僧侶がちょぼくれや姉さん被りの悪身を踊るところが
この「喜撰」の真髄かなと思います。
高僧が桜に心を奪われて庶民の踊りをノリノリで踊ってしまう、
というおかしさ。
桜に誘われてちょっと里まで繰り出してみたら、
図らずもお梶に一目惚れして、
お梶に袖にされるも桜に浮かれて踊りまくる、
という構図の一枚にして仕上げる予定でした。
姉さん被りの衣装は、全体の造形が面白いのと、
色使いが絶妙なのでよく印象に残っています。
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