描かれている人物
AKPC19
左から:傾城誰ヶ袖、傾城愛染、傾城胡蝶、傾城浮橋、傾城八重衣
絵の解説
揚巻たちの後方の長椅子に座る傾城5人
並び傾城の名前および座り順は変わりませんが、衣装(俎帯、打掛、俎帯と打掛の組み合わせ)は舞台によって異なります。
この絵は2010年4月の歌舞伎座の舞台を参照しました。
俎帯の柄:
左から
「鶴と亀」
「鼓と瓢箪」
「獅子と牡丹」
「鳥兜と紅葉」”紅葉賀(もみじのが)”と呼ばれる組み合わせ
「鷹と紅葉」
別バージョン:
違う柄の俎帯。
上記5点以外の柄の俎帯です。
左から
「花筏」
「鳳凰」
「花車」
「獅子二匹」
あらすじ
主な登場人物と簡単な説明
三浦屋の前で揚巻を出迎える傾城たち。
白玉、揚巻が登場した後は、三浦屋の店先に座って舞台に花を添える。
・誰ヶ袖(たがそで)
・愛染(あいぜん)
・胡蝶(こちょう)
・浮橋(うきはし)
・八重衣(やえごろも)
あらすじ
吉原仲之町、三浦屋の格子先。
吉原一の人気花魁揚巻(あげまき)の元へは髭の意休が子分をつれて通ってきます。
助六の喧嘩沙汰を心配した母満江と白酒売りになった兄の十郎は、揚巻のところへ意見を頼みに来て、その真意を知ります。
助六があちこちで喧嘩を起こすのは、刀を詮議するためなのでした。
意休は助六の本心を見透かし、兄弟団結して親の敵を討てと意見をし、香炉台を切って見せます。
その刀こそ友切丸で、意休こそ伊賀の平内左衛門という盗賊だったのです。
はやる助六を、揚巻は意休の帰り際を待つようなだめるのでした。
ーー幕ーー
この後、水入りの場がつく場合があります。
意休を討った助六は、揚巻の気転で、刀を持って吉原を抜け出します。
私のツボ
俎帯いろいろ
格の高い遊女が身につける豪華な俎帯。
一度にたくさん俎帯が登場する演目はなんといっても「助六」で、
揚巻、白玉、並び傾城5人と、7枚もの俎帯が一堂に会します。
揚巻は”端午の節句”、”七夕の節句”、白玉は”蝶と紅葉”と、
俎帯のデザインは決まっています。
では並び傾城はどんな俎帯かしらと軽い気持ちで描き始めたのがかれこれ5年前。
手元に資料がたくさんある2010年のさよなら歌舞伎座公演を元に描き始めました。
念の為にと、他の公演の資料をひっくり返してみると、衣装が違う!
並び傾城の名前は同じなのに、俎帯も打掛も違うではありませんか。
おまけに色違いもあり、これは調べ直さねば…
と描きかけのまま一旦保留。
そして月日は流れ…
いつか仕上げよう、あるいは破棄しようと
長らくアトリエの片隅に立てかけられていた並び傾城のパネル。
今月、南座で「助六」がかかっているので、良い機会だと仕上げました。
さすがに長い間放置していたので水彩紙の滲み止めが蒸発してしまったようで、彩色も苦戦しました。
鳳凰の俎帯は部分的にしか資料を集められなかったので、ほぼ推測です。
鳥兜
並び傾城の俎帯が気になったきっかけは、鳥兜模様の帯。
この図柄が何なのか分からなくて調べたところ鳥兜と分かりました。
雅楽の際に用いられた被り物で、鳳凰の頭を模したものとされています。
トリカブトというと有毒植物のイメージが強いですが、名前の由来は雅やかです。
雅楽は何度か観たことがありますが、何か頭に被っている程度にしか認識していませんでした。
こうして曖昧だったものがピントが合ってはっきり見えると楽しいものです。
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