COPC41 野毛(横浜)

ご当地シリーズ

絵の解説

ジャズに寄席に演芸場に大道芸。
歌って飲んで泣いて笑ってまた飲んで
きらめくネオンと賑わいと、人々の活気と熱気でカラフルな街。

原画

レミーの木簡人形

横浜随一の繁華街、野毛。
小さなバーや居酒屋、クラブがひしめき合う、
よくいえばレトロで懐かしくて飾らない、
平たくいえば雑多な酔っ払いの街。

野毛山の麓に中央図書館があり、
横浜に住んでいたときによく行く街の一つでした。

関内から吉田町を通り、
大岡川沿のビル通称ハーモニカ横丁をのぞむ都橋を渡り、
野毛本通りを歩いて野毛坂を登れば図書館に到着。
昼間の歓楽街は静かで人もまばらです。

あるときふと入った路地に小さなロックバーを見つけました。
まだ開店前でひっそりとしています。

地下に降りる階段の横のショーウィンドウに
所狭しとレコードジャケットやポスターなどが飾ってありました。
バーの店主は70年代のアメリカのハード・ロックがお好きのようです。
一坪ほどの小さなショーウィンドウ。

ふと見ると木彫りのギターが目に入り、
よくよく見るとそのギターの背景に等身大の人間が彫られていて、
それは Motörhead のレミー・キルミスター。
飛鳥時代の遺跡から出土するような薄い木簡人形のようなレミー。
しかも等身大。

おそらく誰かの手作りで、
ヒゲも長髪も帽子もサングラスも咥えタバコも革ジャンも木彫りとペイントで、
似てるとかどうとかそんな野暮なことを言わせない、
強力な愛に圧倒されました。

昭和レトロとして語られることが多い野毛。
街のちょっとした歓楽街は日本全国にあって、
どこも野毛のように懐かしい昭和の香りを残しています。

その昭和の香りはどこから来るのかというと、
おそらく小さなバーやクラブが放つ個性のきらめきです。
それぞれのお店のこだわりやら主張やら愛やらが溢れ、
それがモザイクのように街を彩る。
流行よりも、時代の空気よりも自分の世界。
無数の宇宙が渦巻いているのです。

つい自分の宇宙が溢れてしまうアクの強さが昭和なのかなと
昭和生まれとしては思うのでした。

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