KNPC210 釣女(つりおんな)

かぶきねこづくし

描かれている人物

上:(左から)醜女、太郎冠者
中:(左から)上臈(じょうろう)、大名
下:(左から)醜女、太郎冠者

絵の解説

醜女に驚く太郎冠者

原画

良いムードの上臈と大名

原画

醜女に捕まる太郎冠者

原画

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・大名(だいみょう)
とあるところの領主。
嫁に相応しい相手を探している。

・太郎冠者(たろうかじゃ)
大名のお供。
大名と同じく独身で嫁を探している。

・上臈(じょうろう)
恵比寿様のお告げで現れた美しい姫

・醜女(しこめ)
太郎冠者の妻として現れた押しの強い女

あらすじ

とある土地の大名が、太郎冠者をお供に縁結びで有名な西宮の戎(えびす)様に参詣に出かけた。
二人は「嫁が欲しい」と神様に祈願し、神社で一晩過ごす。
すると、大名は夢の中で「あなたの花嫁は西の門にいる」とお告げを受ける。

大名が急いで西の門に行くと、釣竿が落ちていた。
大名が釣竿を海に放つと、美しい上臈が現れ、二人はめでたく夫婦となる。

太郎冠者も勇んで釣り糸を垂らすと、醜女が現れる。
驚いた太郎冠者は逃げ回るが、猛アタックする醜女に捕まってしまう。
二組のカップルが成立し、めでたしめでたし。

私のツボ

ややこしや〜

現代の価値観や倫理観では色々とNGが出そうな舞踊劇ですが、百聞は一見にしかず。
おおらかでユーモアたっぷりで思わず笑ってしまうお伽噺です。
太郎冠者と大名のすっとぼけコンビの珍道中があって、そこにさらに笑いを添えるのが醜女です。
醜女の面白さはビジュアルというよりその動きや言動が滑稽で、戸惑う太郎冠者と相まって、笑いを誘います。
太郎冠者も嫌がりつつも醜女の釣り糸に身を委ね、まんざらでもないのでしょう。
「身替座禅」の右京と奥方は、太郎冠者と醜女の後の姿ではなかろうかと思うと楽しいです。
「釣女」も醜女とストレートすぎる役名ですが、観ているうちに醜女が可愛い乙女に見えてくる不思議よ。
ただ、醜女も太郎冠者も笑いを取ろうとすると、それはちょっと白けてしまうので、喜劇というものは難しいものです。
ややこしや、ややこしや〜。

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