KNPC204  祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)〜金閣寺(きんかくじ)

かぶきねこづくし

描かれている人物

KNPC204
上段左:此下東吉
上段右:松永大膳
下段:雪姫

絵の解説

縄が解けた雪姫。

雪姫

〽傍なる碁笥(ごけ)を追い取って〜
東吉に碁で負けた上に挑発されたことに腹を据えかねた大膳は、碁笥を井戸へ投げ入れ、これを手を濡らさず取るようにと難題をふっかける。

松永大膳

〽見上げる空にかくかくたり
敵の軍勢の気配を察知しての見得

真柴久吉

修正パーツその1
大膳の髪

修正パーツ1

修正パーツその2
切れた縄

修正パーツ2

あらすじ

祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)」四段目

主な登場人物と簡単な説明

・雪姫(ゆきひめ)
絵師・雪舟の孫で、自身も絵師。

・松永大膳(まつながだいぜん)
天下を狙う大悪人。
夫ある身の雪姫に横恋慕している。
反逆を起こして金閣寺に立て籠もっている。

・此下東吉(このしたとうきち)実は真柴久吉(ましばひさきち)
小田春永の家臣。
慶寿院を救うため、寝返ったふりをして大膳のところへ潜入した。

・狩野之介直信(かのうのすけなおのぶ)
雪姫の夫で、足利家お抱えの絵師。

・慶寿院(けいじゅいん)
将軍・足利義輝の母。
大膳に捕らえられ、金閣寺に幽閉されている。

・松永鬼藤太(まつながきとうだ)
大膳の弟。

・十河軍平(そごうぐんぺい)
松永大膳の家来だが、実際は東吉の家来・佐藤正清である。

あらすじ

足利将軍に謀反を企む松永大膳は、将軍の母・慶寿院を金閣寺の二階に幽閉している。
そこへ此下東吉が来て、大膳に仕官を願い出る。
大膳は東吉に碁の相手をさせるが負けてしまい、挙句東吉に挑発される。
怒った大膳は碁笥を井戸に投げ入れ、手を濡らさず拾ったら召し抱えると難題をふっかける。
東吉は樋(とい)に瀧から水を井戸に引き入れて碁笥を拾い上げ、大膳の家来となる。

一方、大膳は絵師狩野雪村の娘雪姫と婿直信も金閣寺に囚えていた。
天井に竜の絵を描かせるという口実で雪姫を口説いていたのである。
絵を描くか、言いなりになるか迫る大膳。
手本が無いと絵は描けぬと言う雪姫に、大膳が手本にと刀を抜く。
その刀こそ、雪姫の父・雪村が何者かに殺され奪われた家宝の刀・倶利伽羅丸であった。
父の敵と雪姫は斬りかかるが、桜の木に縛り付けられてしまう。

絶体絶命の雪姫は、祖父・雪舟の故事に倣って桜の上に鼠の絵を描く。
たちまち白鼠が現れ、縄を食いちぎる。
自由の身になった雪姫に鬼藤太が気付き、捕えようとするが返り討ちにあって命を落とす。
そこへ東吉があらわれ、実は真柴久吉と名乗る。
久吉は雪姫を助け、家宝の宝剣を渡す。
親の仇と大膳を討とうと逸る雪姫だったが、久吉に説得され、まずは夫の元へと急ぐのだった。

大膳の手下たちが久吉に襲いかかるがこれを蹴散らし、高楼の最上階に幽閉された慶寿院を助ける。
怒り狂う大膳が現れるが、久吉は戦場での再会を約して別れる。
「方々、さらば」

私のツボ

「金閣寺」といえば

KNPC113で欲張りすぎたので、控えめにしました。
かつKNPC113と被らない場面かつ「金閣寺といえば」というテーマで構図を絞りました。

「金閣寺」といえば
①縄に縛られた雪姫と桜吹雪
②瓢箪柄の衣装の東吉
③松永大膳の王子と小忌衣

①は色々と見せ場があるので構図と相談

②は前回描いたので、今回は武将姿。
瓢箪柄の裃衣装の方が記憶に残りやすいのですが、この武将姿がなかなかどうして爽やかで美しいです。
もちろん瓢箪があしらわれています。
東吉はどなたが演じてもスッキリと瑞々しい二枚目の武将になります。
絵に動きが欲しいので、大膳の軍勢たちと立ち回りが始まる前の見得。

③松永大膳も色々見せ場があるのですが、東吉が召し抱えられる契機ということで碁笥を井戸に放り投げるところ。
雪姫の前で刀の威力を見せつけ、刀を見て不敵な笑みを浮かべる姿が妖しく捨てがたいのですが、碁の方が「金閣寺」らしいので碁笥を採用。
小忌衣を留める紐は華鬘結び(けまんむすび)。
由来は仏具です。
古典の演目に限りますが、小忌衣の紐はほぼほぼ華鬘結びです。
「義経千本桜」の義経、「時今也桔梗旗挙」の小田春永、「本朝廿四孝」の長尾謙信などなど。

描きたい場面など

個人的に好きな場面ですが、細かい場面なので舞台で観てこそ面白く感じられるのでしょう。
後から反芻して楽しむような場面。
それらは「金閣寺」全体を象徴するような場面ではありませんが、このような細やかながら面白い場面がふんだんにあり、それが「金閣寺」の賑やかさ華やかさの一端を担っているのだと思います。

①松永鬼藤太
愛すべき赤っ面。
東吉VS大膳の碁対戦の審判を力み気味に務め、容赦無く兄に敗北宣言するところは全く空気が読めていないのですが、大膳がひっくり返した碁盤をそっと隅へ片す気遣いも見せます。
ですが実戦には弱いようで「動かるるなら動いて見よ」と雪姫の行手を阻むのですが、あえなく雪姫の手裏剣に命を奪われてしまうのでした。
衣装の白が赤っ面に映えます。
やや出来が悪いですが大膳にとっては可愛い弟なのでしょう。

②雪姫が刀に姿を映して髪を整える
刀を持って夫が囚われている船岡山へいざ花道を、その前に七三で刀を抜いて鏡がわりにし髪や胸元を整えます。
愛しい伴侶に会う前に身支度を整える女心の演出ですが、そんな気持ちの余裕があるわけないという解釈もあり、演じる俳優さんによってあったりなかったりします。
花道の引っ込みの流れに緩急がつくのと、ユーモアが物語に軽さと柔らかさを与えるので、個人的には身支度を整える演出がある方が好きです。

③くりから龍
舞台下手に滝があり、その滝を大膳が抜いた刀(雪姫が探している家宝の刀)の上身に映すと滝壺から龍神が立ち昇ります。
ピョーンと勢いよく飛び出し、そしてまた戻る。
都合3回ほど、登場します。
この龍、「鳴神」と同じ龍だと思うのですが、ツチノコのようで可愛いです。
小さい龍なのかと思っていましたが、遠近感によって小さいのだと気が付くまでやや時間を要しました。

修正箇所

王子の毛量が少ないとのご指摘があったので増やしました。
そう言われてみればこれでは単なる長髪オールバックなので、増量しました。

切れた縄を追加してはどうか、とのご提案をいただいたので追加。
確かにあった方が良いです。

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