描かれている人物
左:雲の絶間姫(くものたえまのひめ)
中央:鳴神上人(なるかみしょうにん)
右:黒雲坊(こくうんぼう)、白雲坊(はくうんぼう)
絵の解説
かなり初期の絵です。
岩屋の柱を両手でつかみ片足をからませる”柱巻の見得(はしらまきのみえ)”をする鳴神上人。鳴神上人を囲む枠は注連縄です。
酒を隠し持つ黒雲坊と、肴のタコを隠し持つ白雲坊。呑む気満々の弟子二人。
扇子の影でほくそ笑む雲の絶間姫。色仕掛け遂行中。
あらすじ
「雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)」の四幕目
主な登場人物と簡単な説明
・鳴神上人(なるかみしょうにん)
超人的な力を持つ高僧。
・雲の絶間姫(くものたえまのひめ)
陰陽師・安倍清行の愛弟子。内裏一の美女と誉れ高い。
・黒雲坊・白雲坊(こくうんぼう・はくうんぼう)
鳴神上人の弟子。
あらすじ
「雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)」四幕目
時の朝廷から戒壇(祈祷所)建立を条件に男子出生の祈祷の命を受けた鳴神上人。
男子が出生するも、
朝廷が約束を守らないことを恨んで龍神を滝に封じ込めてしまいます。
おかげで一滴の雨も降らず、民は干ばつに苦しみます。
困った朝廷は雲の絶間姫を鳴神上人の岩谷につかわします。
夫を失った悲しみから出家を願う美女の色香に惑わされ、
勧められるままに酒を飲んでしまいます。
雲の絶間姫は酔った鳴神から雨を降らせる手段を聞き出します。
雲の絶間姫が滝壺のしめ縄を切り落とすと、龍神が飛び去り大雨が降ります。
やがて目覚めた鳴神は、騙されたことを知るや
怒りのあまり雷神となって雲の絶間姫を追うのでした。
私のツボ
オレンジと黄色
前半のユーモラスな台詞劇、後半の豪快な荒事という対照的な構成が面白いです。
物語も面白いのですが、舞台美術が楽しく、色が効果的に使われていると感じる舞台です。
滝壺の近くの岩屋なので全体的に薄暗く、滝の青以外は彩度が抑えられています。
そんな薄暗い中で、前半は雲絶間姫が眩しく、文字通り、唯一”色”気のある存在です。
雲絶間姫が注連縄を切って、閉じ込められていた竜神が空に登ると、ドロドロドロという音とともに稲妻が下がってきます。
ここから後半。
怒り狂った鳴神上人は火焔の衣装を纏い、弟子たちがたくさん出てきてアクロバティックな立ち廻り。
火焔のオレンジと黄色、弟子たちの黄色の股引が目まぐるしく動きます。
暗い舞台に映えるオレンジと黄色が強く印象に残りました。
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