KNPC132 吹雪峠(ふぶきとうげ)

かぶきねこづくし

描かれている人物

直吉、助蔵、おえん

絵の解説

吹雪峠

原画

縦に4コマ漫画。
右側は前半、左側は後半。
猛吹雪の中、小屋を見つける助蔵とおえん→安心する二人→そこへ旅人が来る→直吉に驚く二人→謝る二人
直吉に許されイチャつく助蔵とおえん→怒る直吉→追い出される二人だったが雪に阻まれ小屋に戻る→直吉が立ち去る

原画

あらすじ

「吹雪峠」宇野信夫 作

主な登場人物と簡単な説明

・直吉(なおきち)
江戸の俠客。
助蔵の兄貴分。
弟分の助蔵に女房を寝取られた。

・助蔵(すけぞう)
3年前、兄貴分の直吉の女房おえんと恋仲になり駆け落ちした。
堅気になり、八王子でおえんと暮らしている。

・おえん
直吉の女房だったが、助蔵と恋仲になり駆け落ちした。

あらすじ

助蔵が、おえんと駆け落ちしてから三年。
おえんは助蔵の兄貴分・直吉の女房だった。
二人は直吉に見つかるのではないかと怯えながら暮らしていた。
直吉への罪悪感と不安から病がちになった助蔵は、日頃から信心する身延山に参詣する。
だが、帰り道の峠で猛吹雪にあう。
雪の中、二人はようやく見つけた山小屋に避難する。

そこへ道に迷ったと一人の男がやって来た。
囲炉裏の明かりに照らされた顔を見てみれば、その男はなんと直吉であった。
驚いた二人は必死で謝り、直吉は二人を許す。

駆け落ちしてから病がちになった助蔵が激しく咳き込み、おえんは甲斐甲斐しく世話をする。
その姿を見た直吉は刀を抜いて二人に出て行けと迫る。
外は猛吹雪。
助蔵とおえんは命乞いをするうちに争いを始め、二人は罵り合う。
そんな二人を見た直吉は、突然笑い出し、
「色より恋より情けより、命を大事に生き延びろ」
と有り金を二人に投げ渡して猛吹雪の中一人出ていくのだった。

私のツボ

悲劇と喜劇は紙一重

「ぢいさんばあさん」「巷談宵宮雨」「不知火検校」でお馴染みの宇野信夫の作品。昭和10年初演。
30分ほどの短い演目で、登場人物三人が繰り広げるいわば密室劇です。
江戸末期の設定ですが、時代を問わない普遍的なテーマを扱った戯曲。

この戯曲について、宇野信夫自身が何かで「人間のドロドロした醜い部分を書きたかった」と「吹雪峠」について語っていた文章を読んだことがあります。
追い詰められたら人は簡単に裏切る醜さ、といったことなのでしょう。

私がこの舞台を初めて観たのは、かぶきねこづくしを描く前で、山小屋の戸が外れて倒れてしまうハプニングがありました。
直吉が小屋に入った後だったかなと思いますが、なかなか戸が立てられなくて、客席から起こる笑いを俳優さんが上手に利用しつつアドリブでまとめていました。
そのアドリブは後の芝居に影響はありませんでしたが、私としてはそのハプニングのおかげで舞台が見やすくなり、演出として盛り込んでも良いのではと思うほどです。

なんというか、喜劇と悲劇は紙一重というか、悲劇の中の笑いを示してくれたように思います。
密室で気まずい状況に置かれた三人の男女。
当人たちはもういち早く逃げたい最悪の状況ですが、傍観者にとったら単なる犬も食わない痴話喧嘩です。
しょーもな、で済んでしまう話です。
当人たちが深刻になればなるほど、滑稽に見えてしまう。

助蔵の弱さ、直吉の未練がましさ。
そしておえんの変わり身の早さ。
もう滑稽な喜劇のようで、果てはおえんのしたたかさに”女は強いなぁ”と感心してしまう。

大道具の戸板が外れてしまうハプニングは、それこそ風穴を開けるというか、重苦しい舞台で救いになりました。

哀れな滑稽味、という視点で描いたもの。
それぞれの人間くささ、弱さ、脆さを描き出したかったので、その状況だけを描きました。

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