KNPC129「毛抜(けぬき)」より巻絹(まきぎぬ)

かぶきねこづくし

描かれている人物

巻絹

絵の解説

原画

「アレ、てんごうなさりますな。
かたい顔してじゃらけたお人ではあるわいなあ。
びびびびび~ぃ。」

上部の桜は小野家の壁に描かれているもの。

あらすじ

本外題「雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまさくら)」三幕目 歌舞伎十八番
・粂寺弾正(くめでらだんじょう)
文屋家の家老

・錦の前(にしきのまえ)
小野小町の子孫である小野春道の息女。
文屋豊秀(ぶんやのとよひで)の許嫁。

・巻絹(まきぎぬ)
小野家の腰元。

・小野春風(おのはるかぜ)
小野春道の息子。

他に八剣玄蕃(やつるぎげんば)、秦民部(はたみんぶ)なども出てきますが省略します。

あらすじ

小野家では重宝である小野小町の”ことわりやの短冊”が何者かに盗まれ、
不穏な空気に包まれています。
おまけに錦の前は髪の毛が逆立つ奇病にかかり、
許嫁の文屋豊秀との祝言が遅れています。
ある日、文屋家からの使者として粂寺弾正が小野家にやってきます。

主人である春道を待つ間、
好色の弾正は若衆や腰元にちょっかいを出して戯れています。
傍に置いた鉄製の毛抜が立ち上がるのを見た弾正は、姫の病気の原因を悟ります。

そこへ小原万兵衛という百姓が来て、
小野家に腰元奉公していた妹の小磯が殺されたと訴えます。
小磯は小野春風の子供をみごもって里に帰されましたが出産前に死亡してしまいました。
小磯を返すか、春風の切腹を求める万兵衛を、弾正は斬ってしまいます。
聞けば、文屋家の管轄内に住む万兵衛という男が
妹の小磯が何者かに殺されたと訴えてきており、
その万兵衛は文屋家の保護下にあるとのこと。
弾正がニセ万兵衛の懐を探ると”ことわりやの短冊”が出てきました。

館の主人春道ら一堂が集まりました。
弾正が槍で天井を付くと、大きな磁石を抱えた忍びの者が落ちてきました。
姫の銀製の髪飾りを磁石で吸い寄せ、髪を逆立てていたのです。
犯人はお家乗っ取りを企む八剣玄蕃。
弾正は玄蕃を斬ります。

姫の奇病も治り、重宝の短冊も戻り、お家騒動も解決しました。
弾正は悠々と引き上げるのでした。

私のツボ

巻絹の眉毛

巻絹の出番はそこまで多くはないですが、大好きな役柄なので単体でカードにしました。

額に乗せている紫の布は、”紫の帽子”と呼ばれるものです。
かつらの生え際を隠すためのもので、
古典芝居の象徴として今も着用しているようです。

巻絹はこの帽子から眉毛の先端だけが見える特徴的な化粧です。
「毛谷村」のお園、「壇浦兜軍記」の阿古屋も同じ眉です。

ただ二代目片岡秀太郎の巻絹は柔らかい眉毛が全部見えていました。
また、襟を大きくギリギリまで抜いた襟足の艶っぽいこと。
秀太郎さんらしいふっくらした色香が漂う巻絹で、とても印象に残っています。

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