KNPC53「毛抜(けぬき」

かぶきねこづくし

描かれている人物

粂寺弾正(くめでらだんじょう)

絵の解説

原画

踊る毛抜を見て驚く弾正

あらすじ

本外題「雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまさくら)」三幕目 歌舞伎十八番
・粂寺弾正(くめでらだんじょう)
文屋家の家老

・錦の前(にしきのまえ)
小野小町の子孫である小野春道の息女。
文屋豊秀(ぶんやのとよひで)の許嫁。

・巻絹(まきぎぬ)
小野家の腰元。

・小野春風(おのはるかぜ)
小野春道の息子。

他に八剣玄蕃(やつるぎげんば)、秦民部(はたみんぶ)なども出てきます。

あらすじ

小野家では重宝である小野小町の”ことわりやの短冊”が何者かに盗まれ、
不穏な空気に包まれています。
おまけに錦の前は髪の毛が逆立つ奇病にかかり、
許嫁の文屋豊秀との祝言が遅れています。
ある日、文屋家からの使者として粂寺弾正が小野家にやってきます。

主人である春道を待つ間、
好色の弾正は若衆や腰元にちょっかいを出して戯れています。
傍に置いた鉄製の毛抜が立ち上がるのを見た弾正は、姫の病気の原因を悟ります。

そこへ小原万兵衛という百姓が来て、
小野家に腰元奉公していた妹の小磯が殺されたと訴えます。
小磯は小野春風の子供をみごもって里に帰されましたが出産前に死亡してしまいました。
小磯を返すか、春風の切腹を求める万兵衛を、弾正は斬ってしまいます。
聞けば、文屋家の管轄内に住む万兵衛という男が
妹の小磯が何者かに殺されたと訴えてきており、
その万兵衛は文屋家の保護下にあるとのこと。
弾正がニセ万兵衛の懐を探ると”ことわりやの短冊”が出てきました。

館の主人春道ら一堂が集まりました。
弾正が槍で天井を付くと、大きな磁石を抱えた忍びの者が落ちてきました。
姫の銀製の髪飾りを磁石で吸い寄せ、髪を逆立てていたのです。
犯人はお家乗っ取りを企む八剣玄蕃。
弾正は玄蕃を斬ります。

姫の奇病も治り、重宝の短冊も戻り、お家騒動も無事解決。
弾正は悠々と引き上げるのでした。

私のツボ

「近頃面目次第もござりませぬ」

若衆の秦秀太郎と腰元巻絹にちょっかいを出してすげなくかわされた時の弾正の言葉。
観客の方を向いて謝ります。

閻魔大王とも友人で、頭も切れて腕も立つ、豪放磊落な色好み。
弾正のおかげで四方丸くおさまってめでたしめでたし。

毛抜が大きすぎますが、小さいと客席から見えませんものね。
表情を変えずに毛抜を操る後見が笑いを誘います。

色々とツッコミどころの多い物語ですが、
それも含めて楽しめるユーモラスでおおらかな演目です。

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