KNPC38、40 「仮名手本忠臣蔵」〜道行旅路の花聟

かぶきねこづくし

描かれている人物

KNPC38:鷺坂伴内
KNPC40:(左から)おかる、勘平

絵の解説

おかる、勘平を邪魔する伴内。

原画

おかるの故郷・山崎を目指し、東海道を下る二人。

原画

あらすじ

「仮名手本忠臣蔵」道行

主な登場人物と簡単な説明

・早野勘平(はやのかんぺい)
塩谷判官の家臣。おかるは恋人。

・お軽(おかる)
塩谷家の腰元として顔世御前に仕えている。勘平の恋人。

・鷺坂伴内(さぎさかばんない)
高師直の家臣。おかるに横恋慕している。

あらすじ

おかるとの逢瀬にふけっていたため、主君の大事に駆けつけることができなかった勘平。
申し訳に切腹しようとするが、おかるに止められ、おかるの郷里である京都郊外の山崎へ落ち延びる。
途中、戸塚で花四天を引き連れた伴内に絡まれるが、勘平が蹴散らし、二人は逃避行を続けるのだった。

私のツボ

ちょっとひと息

文楽で三段目の「裏門」にあたる場面が、歌舞伎では舞踊として独立したもの。
三段目、四段目の重苦しく暗い舞台から一転、遠目には富士山、桜に菜の花が咲き誇る美しい舞台美術。
七段目の一力茶屋も華やかですが、この「道行旅路の花聟」通称「落人」は戸塚山中という舞台設定のせいか、牧歌的でのどかです。
腹の探り合いのない、ちょっとした箸休めのような場面です。
腰元の定番衣装・紫の矢絣を着たおかるが可愛いらしく、勘平も凛々しいです。
おかるの衣装が矢絣でない場合もあり、ここはおかるを演じる俳優さんによるようです。

伴内と藤太

歌舞伎の二大半道敵といえば、「仮名手本忠臣蔵」の鷺坂伴内と「義経千本桜」の早見(逸見)藤太。
「落人」と「吉野山」は、どちらも美しい男女の道行に滑稽な半道敵が花四天と絡むという構成です。
文楽の用語を借りれば、チャリ場(滑稽な場面)担当の伴内と藤太。
観るからに滑稽な半道敵は、悲劇の中でちょっとした笑いを提供してくれる清涼剤のような役割です。
下がり眉がお茶目な三枚目で、個人的には大好きな役どころです。

藤太は武将なので家来を引き連れて登場するスタイルで、藤太の人となりはそこまで分かりません。
一方、伴内は主君である師直との絡みもあるので、その人間性がよく分かります。
せこくて、ずるくて、お金が大好きで、長い物には巻かれるタイプ。
なんと人間くさいのでしょう。
ご機嫌で幕を引く姿がなんとも可愛らしいです。

由良之助はかくありたしという理想像ですが、伴内しかり勘平しかり、つい共感できてしまう人間くさい卑近な人物が多いのも「忠臣蔵」の魅力です。

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