SNPC19 酉の市(とりのいち)

四季ねこねこ

絵の解説

11月の酉の日に行われる商売繁盛を祈るお祭り、酉の市。
夜更けの境内を煌々と照らす提灯に、大小様々な縁起の良い熊手。

「これ、もらおうか。いくら?」
「はいよ!五万円ね」
「もっとまけてよ、一万円でどう」
「旦那にはかなわねぇな。よし、売った!」
「嬉しいねぇ。それじゃ、一万円。それからご祝儀で四万円だ。」
「毎度あり!旦那の商売繁盛を祈念して、よぉ〜お!」
店員総出で威勢の良い掛け声に合わせて三本締め。
夜更けの外出にうとうとしていた子猫も掛け声に目が覚めて三本締めに参加します。

人間界の熊手は、中央に天照大神の象徴として”おかめ”を据えるのが通例ですが、猫界は招き猫を飾るのが定番です。

原画

酉の市

11月の酉の日に行われる酉の市。
一の酉、二の酉、三の酉と、最大で三回開催されます。
酉の市といえば浅草・鷲(おおとり)神社で、歴史的にも古く有名です。
他、新宿・花園神社など各所で開催されますが、東日本に限定された行事のようです。

似たようなお祭りが関西の十日戎(とおかえびす)で、毎年1月9日から3日間行われます。
熊手の向きが違ったり、熊手の中央に据えるのがおかめではなく大黒様や恵比寿様だったりと細部は異なりますが、熊手が縁起物として売られる商売繁盛を願うお祭りと、ほぼ中身は同じです。

なぜ東西で違うのかは諸説ありますが、西日本が商人中心の社会で、東日本が武士中心の社会だったからではなかろかと思います。
特に江戸の正月は、元旦から三日間は諸大名が江戸城に年頭の挨拶に伺います。
大名行列の見物人と、年頭行事に参加中の大名を待つ従者たち、彼ら目当てのさまざまな棒手振りや屋台が出て、江戸城の周りは人でごった返していました。
さらに1月6日は寺社が挨拶に登城するので、商人も神社も十日戎の準備をする時間が無いというのが実情ではないかと思います。

文中に書いた値切りのやりとりは、浅草に住んでいた時にお世話になっていた不動産屋のマダムに教えていただきました。
不動産屋には立派な熊手が飾ってあり、雑談のついでに値段を聞いたらそんな野暮なこと聞くもんじゃないよ、とたしなめられ、酉の市での”値切りの儀式”なるものをご教示いただきました。
あいにく、まだ実践には至っておりません。

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