SNPC18 野点

四季ねこねこ

絵の解説

「けっこうなお手前で」
寺の庭で野点の催し。
足が痺れてお隣さんに気づかれないように足をモゾモゾ。
お隣さんは大丈夫かしらと声を掛けるもの憚られて気づかぬふり。
涼しげな顔で正座をキメるご婦人は、正座補助椅子をこっそり仕込んでいます。
子供たちが幕から不思議そうにのぞいて、赤毛氈と紅葉と、紅く染まる秋の午後。

原画

冬の前の華やぎ

「この花の開いてのち、さらに花無しと思えば、とりわけ色香の身にぞ沁む」
「鬼一法眼三略巻〜菊畑」より

咲き誇る菊を見て、鬼一法眼の言葉。
かつては冬に咲く花は少なく、満開の菊は冬を前にしての最後の華やぎだったのでしょう。
今でこそ冬も美しい花が咲きますが、紅葉は晩秋にしか見られない事を考えると、花以上に貴重かもしれません。
燃え盛るような紅葉の赤、黄金のような銀杏の輝き。
樹木なので高さもボリュームもあり、花よりも派手で、存在感があります。
そして葉は落ち、丸裸になって春の芽吹きを待つ。
木々の冬眠の前の祝祭のよう。

野点は春が多いですが、紅葉の宴を描きたくて秋の野点にしました。
花見と違って、紅葉の下での宴席が今ひとつしっくりこないのは、秋だからかもしれません。
これから冬に向かう季節、どこか物憂げな秋の日には心静かにお茶をたて、定めなく/ とび散らふ / 落ち葉かな
上田敏訳・ポール・ヴェルレーヌ「落葉」より

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