KNPC155 再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)

かぶきねこづくし

描かれている人物

左上
桜姫
右上
(左から)山路、波平
左下
千葉之助清玄(ちばのすけきよはる)
右下
清玄(せいげん)

絵の解説

左上
新清水の舞台から傘を手にして飛び降りる桜姫
右上
(左から)山路、奴波平
左下
千葉之助清玄(ちばのすけきよはる)
桜姫からの恋文を読んでいるところ。
右下
桜姫の片袖を抱きしめる清玄
左隅の人魂
さまよう清玄の人魂

原画

カード制作のための原画は、パーツごとに描いてパソコン上で組み合わせるときと、全体で一枚の絵にして描く場合があります。
どちらにも長短あり、演目の都度決めています。
この演目は滅多に見られないので

気合を入れて一枚絵で描きました。

あらすじ

松貫四 作

主な登場人物と簡単な説明

・桜姫(さくらひめ)
北条時政の娘。清玄と恋仲。

・清玄(せいげん)
新清水寺の僧侶。

・山路(やまじ)
桜姫の腰元。

・千葉之助清玄(ちばのすけきよはる)
桜姫の恋人。

・波平
清玄(きよはる)の奴

他に大藤内成景(おおとうないなりかげ)、
荏柄平太胤長(えがらのへいたたねなが)などがいますが省略します。

物語

序幕 新清水花見の場
二幕目 雪の下桂庵宿の場
大詰め 六浦庵室の場

新清水寺の清玄法師は、花見に来ていた桜姫に心を奪われます。
桜姫の恋人の千葉之助清玄と読みは違えど同じ名前であるが故に
身に覚えのない罪をきせられ寺を追放されてしまいます。
清玄は真の破戒僧となり桜姫に執着するのでした。

松貫四(まつ かんし)

二代目中村吉右衛門のペンネーム。
この演目は、「遇曽我中村(さいかいそがなかむら)」をもとに、
中座と金丸座での上演のために1985年に新しく書き下ろしたもの。
「遇曽我中村」の初演は寛政5年(1793年)に中村座。

松貫四という名前の由来
「遇曽我中村」は合作で書かれており、作者の一人が松貫四と言います。
松貫四は芝居茶屋菊屋の主人で、
歌舞伎好きが高じて浄瑠璃作者としても活躍します。
玉泉堂(ぎょくせんどう)と名乗ったのち、
近松貫四から松貫四と名前が変わります。
「遇曽我中村」の他に「伽羅先代萩」や「神霊谷口渡」にも参加しています。

松貫四の娘が三代目中村歌六と結婚。
二人の間に生まれたのが初代吉右衛門です。

松貫四は通称万屋吉右衛門(よろずやきちえもん)と言い、
初代は母方の祖父の名にちなんで吉右衛門と名乗りました。

松貫四は二代目吉右衛門にとって非常にゆかりのある名前なのです。

私のツボ

初めて観た時、
二代目吉右衛門が脚本を書いたと知ってとても驚きました。
大学ではフランス文学を専攻されていましたし、
後味の悪さもエログロも守備範囲なのかもしれません。
その後、「遇曽我中村」という原作があったことを知り、
納得するとともに安心したのを覚えています。

”桜姫清玄物”のお約束に則り、
桜姫は助かりますが清玄の破滅ぶりが救いがありません。
笑いもありません。
人はどこまで妄執の虜になるのか、どこまで餓鬼になれるのか。
堕ちていく様が淡々と描かれているような気がします。

笑いに逃げない、茶化さない。
そこが松貫四らしいような気がいたします。

 

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