描かれている人物
北村大膳、河内山
絵の解説
北村大膳にほくろを指摘された河内山
紗綾形紋様
紗綾形は崩し卍(まんじ)とも呼ばれる紋様で、武家屋敷の襖などによく使われます。
紗綾形の地紋の着物も武家の衣装でよく使われます。
模様の法則を解読するのは楽しいですが、江戸時代の職人さんは凄いわと思い知らされる柄の一つです。
あらすじ
本外題 「天花粉上野初花」(くもにまごう うえののはつはな)
河竹黙阿弥 作
主な登場人物と簡単な説明
・河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)
御数寄屋坊主(おすきやぼうず)。
御数寄屋坊主について
将軍や大名に仕え、
登城者に茶を提供したり、
茶にまつわる道具や行事などを取り仕切る役人。
身分は御家人で武士階級に属します。
史実の御数寄屋坊主は専門知識を要するため茶の家筋の世襲制でした。
・松江出雲守(まつえいずものかみ)
松江藩の当主。短気で身勝手。
意に従わない浪路を手打ちにしようとしている。
・浪路(なみじ)
上州屋の娘で松江家に腰元奉公している。本名はお藤。
・北村大膳(きたむらだいぜん)
松江家の重役。自分の保身と出世しか頭にない。
他に浪路の母親や親戚の和泉屋清兵衛、
高木小左衛門といった松江家家老なども出てきますが省略します。
あらすじ
河内山が質屋の上州屋へ行くとなにやら取り込み中の様子。
聞けば松江候に奉公中の店の娘お藤が、殿の側室になれと言われて困っているとのこと。
河内山はお藤を救い出すことを約束し、手付け金百両を受け取ります。
—ここまで<上州屋質見世の場>上演されない場合もあります—
上野寛永寺の使者になりすまして松江家に乗り込んだ河内山は
寛永寺の威光を笠に松江守を脅して浪路を救出します。
あまつさえ「山吹色の茶をくれ」と袖の下まで要求します。
その帰りの玄関先で北村大膳に正体を見破られます。
河内山の顔に大きなホクロがあるのを覚えていたのでした。
開き直った河内山は、
直参である自分を突き出せば全て将軍様の耳に入るぞと脅し、
悠々と松江家を後にするのでした。
私のツボ
派手な色彩
河内山といえば
鮮やかな朱色の紗の着物と、白地に青の紗綾形の襖。
幕切の松江家玄関先は白、朱、青のコントラストが美しいです。
松江家の襖は大名らしい豪華な誂えです。
浪路を責め立てる部屋は銀に秋草、
河内山が接待を受ける部屋は金の雲文様です。
河内山〜悪の華ver.
河内山宗俊が悪党の正体を表す瞬間です。
対する北村大膳は大きな地雷を踏んでしまったことに気づいていません。
めくるめく河内山の啖呵責めタイムが始まる寸前の瞬間です。
大きく空気が変わる転換の瞬間、その契機となる瞬間、そこを捉えた絵にしたいと常々思っています。
同じ役柄でも、演じる俳優さんによって味わいが変わるのが歌舞伎の面白いところです。
凄みのある冷徹な悪党の男、
愛嬌はあるけれど得体の知れない男、
ちょいワルで色気のある男、
などなど、河内山もさまざまです。
この河内山は、凄みのある悪党の男バージョンですが、別のバージョンも描きたくてKNPC198が出来ました。
コメント