KNPC37 義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)その8 川連法眼館(かわつらほうげんやかた)

かぶきねこづくし

描かれている人物と場面

(左から):静御前、源義経、源九郎狐
音羽屋型の幕切。

原画

あらすじ

「義経千本桜」全五段 竹田出雲・三好松洛・並木千柳(合作)

役の説明

川連法眼(かわつらほうげん):義経が牛若丸だった幼少の頃、預けられていた鞍馬山の東光坊蓮忍(とうこうぼうれんにん)の弟子の一人。義経の兄弟子。
現在は吉野山の僧たちをとりまとめる検校職。

あらすじ

四段目 「川連法眼館」
吉野山の川連法眼館に、二人の忠信が現れ、源九郎狐の正体が露見する。
聞けば、初音の鼓の皮となった狐の子で、親狐を慕い、鼓に付き従ってきたとのこと。
義経は、狐の孝心とこれまでの働きを讃え、初音の鼓を与える。
狐は、夜討ちを企む吉野山の悪僧たちを蹴散らし、鼓を抱いて古巣に帰っていくのだった。

私のツボ

儚い安らぎ

カードに描いたのは上手の桜の木に登って絵面の見得で終わる音羽屋型です。
澤瀉屋型は桜の木に登った源九郎狐が悪法師たちを妖力でおびき出し、宙乗りで吉野山へ帰って行きます。
狐六方で花道を引っ込む型もあります。
幕切以外にも、初めの川連法眼夫婦の出る場面がカットされたり、悪法師たちが出ない等、その都度演出が若干異なります。
これは家の演出や型の他、会場や時間の都合などもあるようです。

というわけで、あまり家を限定しないような場面を描きました。
源九郎狐がくるくると人形振りのような動きをする場面も可愛いらしく、「川連法眼館」らしいのですが、やはり演目の大団円として静御前・義経・源九郎狐の三者の思いが交歓する場面にしました。
親狐とまた一緒に暮らせることを喜ぶ源九郎狐。
その姿を見て温かい気持ちになる静と義経。
殺伐とした戦国の世にあって、束の間の平和を噛み締める三者。
すぐ散ってしまう満開の桜のような儚い安らぎであっても、今はその幸せを噛み締めていたい。

横長の歌舞伎の舞台を正面からそのまま描くと間伸びするので、桜の木につかまっている源九郎狐なめの画角にしました。
三者を一つの構図に収めたかったので、やや強引な角度で収めました。

寄り添う静と義経、その視線の先には源九郎狐。
彼らの視界には満開の桜。
美しい幕切です。

宙乗り

ケレン味たっぷりの澤瀉屋型。
狐の妖力を目の当たりにするかのような、幻想的な幕切です。

「どこじゃ?かぶきねこさがし1」(講談社)より

「どこじゃ?かぶきねこさがし1」(講談社) より原画

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