描かれている人物
上段左、同右、下段右:一條大蔵卿
下段左:常盤御前
絵の解説
<奥殿の場>
一條大蔵卿のぶっかえり。
白と朱の市松模様に秋草。胸元には鳳凰。
俳優さんによって衣装が異なります。
<檜垣茶屋の場>
茶屋の椅子をシーソーにして遊ぶ一條大蔵卿。
白龍紋地に秋草と霞模様の直衣(のうし)に浅葱色の指貫(さしぬき)。
黒三位の烏帽子。
<奥殿の場>
常盤御前
十二単
<奥殿の場>
つくり阿呆を告白する一條大蔵卿。
ぶっかえる前。
あらすじ
「鬼一法眼三略巻( きいちほうげん さんりゃくのまき)」四段目
主な登場人物と簡単な説明
・一條大蔵卿(いちじょうおおくらきょう)
源氏の子孫でありながら源平の争いには全く無関心で、阿呆として有名な公家。
平清盛から愛妾の常盤御前を下げ渡された。
能狂言が大好きで、踊りが得意。
・常磐御前(ときわごぜん)
元は源義朝の側室で牛若丸の母親だが、現在は大蔵卿の妻となる。
毎日、夜更けまで楊弓(ようきゅう)で遊んでいる。
・吉岡鬼次郎(よしおかきじろう)
源家復活を図る源氏の忠臣。
・お京(おきょう)
鬼次郎の妻。弁慶の姉。
他、八剣勘解由、鳴瀬などがいます。
あらすじ
これまでの経緯
保元・平治の乱で源為義・義朝親子は平家に滅ぼされた。
平清盛は義朝の後室・常盤御前を妾としていたが、都一のうつけ者として知られる一條大蔵卿に下げ渡す。
<桧垣茶屋>
鬼次郎夫婦は常盤御前の真意を探るため、大蔵卿の館にやってくる。
鬼次郎の女房・お京は館に潜入するため、女狂言師のふりをして大蔵卿に接近、首尾よく召抱えられる。
<奥殿>
お京の手引きで常盤御前の元へと忍び入る鬼次郎。
常盤御前は、夜通し楊弓で遊んでいると見せかけて平家調伏を行っていると説明する。
それを盗み聞きした平家の密偵・八剣勘解由は、御簾越しに大蔵卿に長刀で切りつけられる。
凛々しい表情の大蔵卿は、三十年来作り阿呆を装ってきたのだと語る。
勘解由を討ち、源氏の重宝友切丸と伝言を鬼次郎に託した大蔵卿は、平家を欺くため、再び阿呆に戻る。
私のツボ
公家の日常生活
物語も面白く、見どころ描きどころもたくさんありますが、欲張らずに一條大蔵卿と常盤御前の公家夫婦に絞りました。
一條大蔵卿の変化と、公家の豪華な装束、優雅な佇まいを描きたかったので。
芝居を見に行ったり、楊弓で遊んだり、戯曲の中とはいえ公家の日常生活を垣間見るようで楽しいです。
お屋敷も金襖に花輪が描かれ、青々した千畳敷が広がって豪華です。
一條大蔵卿の衣装は秋草をモチーフにした柄で統一しています。
<檜垣茶屋>では作り阿呆なので、そのフワ〜っとした佇まいと淡い色調の衣装が非常によく合います。
公家の品位を保った上品な阿呆だからか、舞台で見て受ける印象は「かわいい」なので、作り阿呆のコツは幼児性なのかもしれません。
とはいえ、ニタァとお歯黒をつけた口で笑う姿は不気味です。
作り阿呆を告白する時は、一瞬、誰だかわからない変貌ぶりです。
衣装も公家らしい直衣姿ではなく、白の襦袢に黄緑の袴と藤色の着付で、控えめな色です。
ここで一旦抑えて、ぶっかえりで派手な衣装。
常盤御前は終始十二単です。
渦中の公家夫妻の装束を描きたくて、二人に絞りました。
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